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井戸に吸着剤注入 第一原発で導入探る

アパタイト・バリアについて説明する協力企業の担当者。霧の向こうにはコロンビア川がある=米国ワシントン州ハンフォード・サイト

 浜通りの復興と産業振興に向けて政府が策定する「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の実現には、東京電力福島第一原発の汚染水問題の早期解決が前提になる。避難者の帰還などに影響を与えるためだ。
 福島第一原発では1日約400トンの地下水が原子炉建屋に流れ込み、汚染水は日々増え続けている。貯蔵する地上タンクから約300トンの汚染水漏れが昨年8月に見つかった。その後も汚染水の海洋流出などが相次ぎ、対策は思うように進んでいない。
 政府の視察団が汚染水対策の先進地として訪れた米国ワシントン州のハンフォード・サイトは1940~80年代にかけて軍事用プルトニウムを製造した。同施設を管理する米国エネルギー省は近くを流れるコロンビア川の水の汚染を防ぐために「アパタイト・バリア」という手法を導入している。
 アパタイト・バリアは、川岸に沿って等間隔に井戸を掘り、ストロンチウム90などの放射性物質を吸着するリン酸カルシウム(アパタイト)を注入する手法。深さ約8メートルの井戸に吸着剤を一度注入するだけで、効果をほぼ恒久的に維持できるとしている。
 同省によると、川に流入するストロンチウム90の量はアパタイト・バリアにより約10分の1に抑えられている。川の水環境への影響はないとしている。周辺の住民は川で釣りを楽しみ、泳ぐこともできるという。
 日本政府は昨年12月20日に発表した福島第一原発の汚染水問題の追加対策で「(漏えいが見つかった)タンクエリア下流において、ストロンチウムを捕集する吸着材を用いた土壌改良を速やかに実施」と明記した。現在、アパタイト・バリアの導入を検討している。汚染水約300トンが漏えいした地上タンクを含むタンク群「H4北」エリアの近くで用い、外洋への汚染水流出を防ぐ。
 しかし、福島第一原発は事故発生直後、原子炉に海水を注入したため、汚染水に塩分が含まれている。ハンフォード・サイトの無塩の汚染水と異なるため、アパタイト・バリアを導入した際に十分に効力を発揮できるか未知数だ。政府は慎重に試験し、導入が可能かどうかを調べる方針。
 視察団に参加した経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課の新川達也原子力発電所事故収束対応室長は「福島第一原発の汚染水対策にじっくりと実験を繰り返している時間はない。有力な手法の1つとして速やかに検討を進めたい」と語った。(本社報道部・丹治隆)

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