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(59)はけ口 アルコール 救いの手 現実逃避、悪循環招く 誰にでも依存の可能性

避難者を取り巻くアルコール問題に警鐘を鳴らす大島医師

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により古里を追われ、自宅も仕事も生きがいも奪われた。言いようのない喪失感にさいなまれる避難者。先行きを見通せない仮設住宅暮らしの中、酒を飲めば、ギャンブルに勝てば一時的に高揚感や満足感を得られる。
 「今回の震災と原発事故では、依存症になる条件がそろいやすかったのかもしれない。誰が依存症になってもおかしくない」。郡山市にあるアルコール依存の専門外来「大島クリニック」理事長の大島直和医師(64)は分析した。
 最初は気持ち良く酔うために飲む。そのうち、気に入らないことが起きる。そのトラブルから逃避するために飲む。さらに症状が進むと手が震えたり、汗をかいたり、眠れなくなったりする。酒を飲むと症状が治まるから、また飲む。悪循環で、どんどん依存していく。
 避難者にとって、原発事故そのものに加え、家族の離散、見知らぬ土地での暮らし、かなわぬ帰還、地域の分断など、避難に伴い従来の生活に戻れないことが大きなストレスになっている。

 アルコールや薬物などで脳内を興奮させると、楽しい、気持ちいい、おいしいなどの感情が湧く。脳内では腹側被蓋野(ふくそくひがいや)から神経伝達物質のドーパミンが放出され、側坐核(そくざかく)が刺激され快感を感じる。その快感に慣れてしまうと、より多くの刺激を欲しがるようになり酒への依存度が強まる。
 「まずは本人に『飲酒に問題がある』と気付かせることが必要」。大島医師は常々、患者の家族らにそう指導している。
 例えば、酒を飲んで部屋の中をめちゃくちゃに散らかしたり、失禁したりした場合、家族は後始末をしてはいけない。家族がきれいにしてしまうと酔っていた本人は気付かないからだ。酔いがさめて「あなたが酔っぱらってやったのよ」と言われて初めて、「自分は飲むと、こんなひどいことをするんだな」と気付く。
 二日酔いで会社に行けない朝は、家族ではなく本人から会社に電話させる。暴力を振るわれたときは迷わず警察に通報、相談する。身の回りの人に迷惑を掛けたと自覚することが、アルコール依存症を治療する第一歩となる。
 「依存症は病気と捉えるべき。意志の強い、弱いではない」。依存症への正しい理解が不可欠で、家族の協力も大事だ。断酒会や患者同士の自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」などに、家族と一緒に参加することが効果的という。

 「仮設住宅であの人が飲んだくれていると聞けば、みんな最初は何とか助けようとする。だけど、疲れて嫌になって、誰も関わらなくなる。そのうちに症状を悪化させ、肝硬変などを併発し亡くなってしまう人もいる」
 大島医師は、避難者の心と体をむしばむアルコール問題に警鐘を鳴らす。クリニックを初めて訪れる患者に占めるアルコール依存症の割合は震災前は28・2%だったが、震災後は34・6%に上昇した。だが、この数字を「氷山の一角」とみる。「受診する人は治療する気がある人。アルコールに依存して体調を崩し仮設住宅や借り上げ住宅から救急外来に運ばれても、治療をせずに避難生活に戻って飲んでいる人がほとんど。数字には表れない」
 病院に行くつもりがない人、行きたくても行けない人に光を当てたい-。神奈川県横須賀市の国立病院機構久里浜医療センターが本県の避難者支援に向けて動きだしていた。

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