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(60)はけ口 アルコール 救いの手 酒量、ストレスに比例 自殺者との関連を推測

本県での支援活動について語る松下副院長

 神奈川県横須賀市の国立病院機構久里浜医療センターはアルコール依存症専門の医療機関だ。昭和38年に日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設け、平成元年に世界保健機関(WHO)から国内唯一の「アルコール関連問題施設」に指定された。
 平成26年度から、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による避難生活でアルコールに依存するようになった避難者らの支援に乗り出す。医師や臨床心理士らを本県に派遣し、心のケアに当たる。仮設住宅を訪問する保健師への助言、本県の医療機関で受診を促すことも想定している。
 「先行きがなかなか見えない福島では、アルコール依存症になる危険性が高い。アルコール問題にどう対応するか、医療関係者や住民と一緒に取り組んでいきたい」。眼下に太平洋を望む医療センターの一室で、副院長の松下幸生さん(52)は力を込めた。

 松下さんが震災後、最初に支援に入ったのは岩手県だった。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不眠、うつ、アルコール問題など心のケアが必要な被災者が大勢いた。支援活動を続けながら、心の片隅に引っ掛かりがあった。原発事故で多くの人が避難を強いられている福島県に行かなくていいのか-。
 26年度からの取り組みは本県から働き掛けがあったわけではない。本県の医師とのつながりから動きだした。昨年秋、福島市にある「ふくしま心のケアセンター」に松下さんの姿があった。事前協議で、ケアセンターの担当者から本県の実情を聞いて驚いた。
 本県で自殺者が増えているという話は初耳だった。内閣府統計では、昨年1年間に震災関連で自殺した人は本県21人(8人増)に対し、岩手県4人(4人減)、宮城県10人(7人増)。「福島の自殺は原発事故が影響しているのかもしれない」
 原発事故で着の身着のまま古里を追われ、避難先の体育館は板の間で寒くて眠れない。すぐに自宅に戻れるかと思ったら、各地を転々とし、家も、仕事も、平穏な生活も失った。酒浸りになっている避難者の姿を想像することは容易だった。
 「酒で命を落とさせてはならない」

 アルコールに依存する人は、周囲から孤立し、酒を飲み、将来に希望を見いだせない場合が多い。原発事故で避難した後に自殺した人の中には、アルコール問題を抱えていた人がいたはずだと松下さんはみる。
 健康への不安や経済的な問題を抱えている場合は飲酒量が減る傾向にあるが、慢性的にストレスのある場合は飲酒量が増える。原発事故で古里を追われ、先行きの見通せない暮らしを強いられ、慢性的なストレスが生まれているに違いない。
 格差もストレスに直結する。仮設住宅から災害公営住宅への移住が始まる。生活再建がスムーズに進まずに仮設住宅に残された住民は不安を一層募らせるとみられる。避難区域再編などで賠償額に差が出れば不満は、より大きくなる。
 松下さんはアルコール問題を招きかねないリスクの多さに心を痛めている。

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