1日付で東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの最高責任者であるプレジデントに就く増田尚宏氏(56)は福島民報社のインタビューに応じ、福島第一原発の安定化に向けた決意を語った。
-廃炉・汚染水対策部門を社内分社化する意義は。
「東電として廃炉汚染水対策にしっかり取り組む姿勢を明確に示すことにある。福島第一原発はもはや原発ではない。汚染されてしまった原子力施設だ。そのことを現場の社員や協力企業の皆さんにも意識してもらう」
-なぜそうした意識が必要なのか。
「事故前は数十年にわたる運転経験の蓄積があり、皆さんにできる限り迷惑を掛けないよう作業を工夫できた。しかし、今はかつてのノウハウが通用しない。その前提で仕事をしないとトラブルにつながり、県民や国民の皆さんに安心、信頼してもらえない。事故前の『風習』のようなものが、まだ現場に残っていると感じる」
-本店や福島復興本社との連携に問題はないのか。
「人的にも資金的にも本店が支えてくれると思う」
-東電は本店の権限が強い印象がある。現場で迅速に判断できる組織になるのか。
「カンパニーとしてヒト、モノ、カネの権限は持っていると思っている。取締役会に諮る案件はあるだろうが、私も現地に詰めるので、意思決定は早くなるはずだ。皆さんから見て、歯がゆいことがないようにしたい」
-作業員の士気を高めることも重要では。
「就任に備え、元請け企業を訪問したが、そういった声が多数、聞かれた。東電の過失が責められるのは当然だが、作業員は世界に類のない現場で働いている。誇りにつなげる取り組みは必要だ」
-廃炉に向けて海外の知見をどう集め、活用するのか。
「国際廃炉研究開発機構(IRID)が福島第一原発に適用できる技術がないか探している。われわれも米国や英国の専門家たちの知恵を借り、自分たちの作業が正しいか確認している。現場の状況について積極的に情報公開をすれば、各国で技術を持ち寄ってくれるのではないかと期待している」
-現在の廃炉工程表は先行きが不明瞭で、避難者から帰還時期の判断材料にならないとの声がある。
「より詳しい工程表の公表までにはまだ時間がかかると思う。数十年先まで見据えるのが難しいからだ。ただ、将来の生活設計につながるような情報だけでも早くまとめたい」
※ますだ・なおひろ
埼玉県行田市出身。横浜国大大学院修了。昭和57年4月、東電入社。平成22年6月から昨年4月まで福島第二原発所長。前任は同社特命役員原子力安全監視室副室長。1日付で常務執行役にも就く。
(カテゴリー:福島第一原発事故)