東京電力福島第一原発で原子炉建屋に流れ込む前の汚染されていない地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」計画で、東電は21日午前、排出基準を下回った地下水561トンを初めて海洋放出した。汚染水対策の柱の一つがようやく動きだした。
初日の放出は午前10時25分から午後零時42分まで実施した。地下水は、排出基準(セシウム134とセシウム137がそれぞれ1リットル当たり1ベクレル、トリチウムが同1500ベクレル)を下回っていることが確認されている。一時貯留タンク(容量千トン)から新たに敷設された約1.2キロの配管を通り、4号機の南側の排水口から海に放出された。
東電のシミュレーションでは汚染水の発生を1日当たり百トン減らせるとしている。ただ、地下水の流れは詳細につかみ切れていない。
昨年8月にくみ上げ用井戸の上流部に位置する地上タンクから300トンの汚染水が漏えいした。タンク近くの観測用井戸では今月19日に採取した地下水からトリチウムが1リットル当たり8万5000ベクレル検出された。
東電は排出基準を超える放射性物質が検出された場合、いったんその井戸からのくみ上げを停止するとしている。
政府と東電は平成24年4月に建屋への地下水流入対策として地下水バイパス計画を発表した。しかし、風評を懸念する地元漁業者らの反発などで、2年余りを要してスタートにこぎ着けた。
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