17日に来県した安倍晋三首相は福島市の福島医大や仮設住宅、桑折町の除染現場などを訪れ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響が色濃く残る本県の現状に理解を深めた。
■「健康状態、他県と同様」
安倍首相は福島市の福島医大で、全県民を対象に東京電力福島第一原発事故による放射線の影響を調べる「県民健康調査」について説明を受け、本県と他県の住民の健康状態がほぼ同様であるとの結果に理解を示した。
福島医大の菊地臣一理事長や山下俊一副学長、阿部正文放射線医学県民健康管理センター長らから県民の健康状態を聞き取り、甲状腺検査の模擬検査の様子を見学した。これまでの検査結果などを質問した。根本匠復興相(衆院本県2区)や森雅子少子化担当相(参院本県選挙区)が同行した。
視察後、記者団から漫画「美味(おい)しんぼ」で、放射性物質と健康被害を関連付けるような描写があったことへの受け止めを問われ、「放射性物質に起因する直接的な健康被害例は確認されていない」と強調した。
首相は福島市の土湯温泉で渡辺和裕土湯温泉観光協会長から風評被害の現状などを聞いた。福島市飯坂町の農家では収穫したばかりのサクランボを試食し、「風評被害や豪雪で大変だったと思う」とねぎらった。
桑折町の除染廃棄物の仮置き場では、高橋宣博町長から説明を受け、「一日も早く除染し、福島の復興を進めたい」と応じた。
■飯舘村民の声を聞く
安倍首相は、全村避難が続く飯舘村民が暮らす福島市の松川工業団地第一仮設住宅を訪れ、菅野典雄村長や村民と意見を交わした。
首相は避難の長期化によりコミュニティーの維持が困難になっているとする村民の訴えに応え、「避難者の健康増進や若者の雇用創出で支援したい」との考えを示した。
意見交換では、放射線の健康への影響を住民に伝えるため村が独自に冊子を作成するなど、リスクコミュニケーションの取り組みを紹介した。首相は「正しく放射能を怖がることは大切」とし、情報発信の重要性を強調した。
■難病の少女励ます 福島のラジオ番組出演 首相
安倍首相は福島市の福島コミュニティ放送「FMポコ」のラジオ番組に、重い病気を患う市内の中学二年生の少女と出演した。
昨年の春、首相は闘病生活を送る少女から手紙を受け取り交流が始まった。今年1月の施政方針演説で少女の話に触れ、難病対策の強化を打ち出していた。
首相は「医学は進歩し、治療法も進んでいく。夢を持ち続けることが大切だ」と少女を励ました。
首相は以前、絵本作家を目指す、この少女が描いた絵のプレゼントを受けた。今回は少女に72色入りの色鉛筆を贈り、夢の実現に向けてエールを送った。
(カテゴリー:福島第一原発事故)