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(75)歯止め 支援の現場から 発せられる「SOS」 苦しさ和らげたい

仮設住宅で入居者の健康状態などを聞き取る門馬さん。週1回の訪問活動。日々、住民の様子が気に掛かる

 二本松市の山あいに仮設住宅が軒を連ねる。東京電力福島第一原発事故によって古里を追われた浪江町民が暮らす。
 平成25年10月下旬。浪江町民で町社会福祉協議会の生活支援相談員門馬幸枝さん(48)は1週間ぶりに各世帯を見て回った。洗濯物を干す主婦、付近を散歩する高齢者...。事故発生から変わらぬ風景があった。
 玄関を開け、声を掛けた。テレビの音しか聞こえなかった。70代後半の1人暮らしの男性は、横になったまま力なく話した。「最近、調子が悪いんだ」。振り向いた男性の表情は曇っていた。

 男性は独身で、きょうだいは県外に暮らしている。長引く避難生活で夏ごろから体調を崩した。心配した町職員、保健師、仮設住宅自治会の関係者らが定期的に見守ってきたが、男性の容体は、悪化していった。
 この日、門馬さんは男性の顔から血の気が引いていくのに気付いた。「呼吸していない」。大騒ぎになった。急患の依頼を受けて駆け付けた医師が心肺蘇生を施し、救急車の到着を待った。一命を取り留めたが、約1カ月後に息を引き取った。
 病院などから死因は知らされなかった。以前、男性方の冷蔵庫には、ヨーグルトと乳飲料しかなかったのを覚えている。「栄養失調で餓死寸前だったのでは」。門馬さんは推測する。
 浪江町によると、原発事故発生前、町には約7000世帯が暮らしていた。人口は約2万人。原発事故により、町民が県内外に分散して避難した結果、世帯数は約1万と4割ほど増えた。約1万4000人が県内、約6000人が県外で避難生活を送っている。県内の仮設住宅は二本松、福島、本宮、桑折などの各市町に散らばる。
 仮設住宅、借り上げ住宅での孤独死や孤立化を防ごうと、町社会福祉協議会は、仮設住宅などへの訪問活動を展開している。生活支援相談員17人がチームをつくり、避難者宅を定期的に訪問する。健康状態の確認や、生活面での悩みなどを聞き取っている。ただ、17人で担当するのは仮設住宅だけでも約2700世帯。「くまなく回るのは不可能」。毎日でも訪れ、避難生活の苦しさを和らげてあげたい-。思いとは裏腹に、門馬さんは、県内各地に分散した住民の見守りの難しさを痛感している。

 原発事故から3年が過ぎ、町社会福祉協議会は優先する訪問先を高齢世帯、1人暮らし世帯、乳幼児のいる世帯に絞った。相談員は週1回の訪問を続け、住民の健康状態などをチェックしている。
 それでも仮設住宅を離れると、次第に不安が心を埋め尽くす。「仮設の人たちは元気でいるだろうか」。慣れない避難生活の中で孤立し亡くなった、あの男性の顔が今も頭から離れない。自分はSOSに気付いていたのか-。同郷の避難者を見守る立場として、自責の念に駆られる。
   ×   ×
 震災と原発事故により現在も約13万人が県内外に避難している。仮設住宅や借り上げ住宅の生活で抱える心労が被災者を追い詰め、死期を早める。震災(原発事故)関連死-。不条理な死を食い止めようと各地で見守り活動が展開されるが、人材確保や支援者側の心の負担などの課題が浮かび上がる。

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