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帰還時期、住民の数 見通し立たず 未策定の9市町村 早期策定へ課題山積

自宅で国や村から示された資料に目を通す草野さん

 避難計画を策定していない9市町村には、帰還時期や帰還する住民の規模の見通しが立たないなど、数々の課題が横たわる。

■田村市
 平成26年内を目標に避難計画を策定する予定。昨年度から見直しを進めている地域防災計画の中に、「原子力災害対策編」として新たに盛り込む。市は運転免許を持たない高齢者や障害者など「災害弱者」の移動手段としてスクールバスなど市所有の車両のほか、民間バスの借り上げなどを想定している。

■楢葉町
 ほぼ全域が避難指示解除準備区域に指定されている。町は26年度内に広域避難計画を策定する。帰町について、早ければ27年春以降としており、その前に策定する。
 県の計画では対象人口7700人を会津坂下、会津美里、柳津の3町に避難させる。主な避難ルートは6号国道、49号国道で、渋滞が予想されるため、県道を含め複数の避難ルート確保を目指している。

■富岡町
 担当者は「全町避難している現状では計画の策定は難しい」と指摘する。町は住民が町内帰還を開始できる時期を震災発生から6年後の「平成29年度以降」としている。今から2年以上先であり、帰還する住民がどの程度になるか、町内での事業再開の状況などが現段階では想定できず、避難計画の土台となるデータがそろわないという。このため、29年度に間に合うように、28年度中に、具体的なデータに基づく実効性のある避難計画を策定する考えだ。

■川内村
 25年度事業として原子力災害対策ガイドブック(初版)を作成し、住民避難の基本パターンを盛り込み住民に配布した。近く、県の広域避難計画を反映し、第二版策定に着手する。完成時期は未定。
 避難の基本パターンとしてスクリーニングの場所までの移動方法は、一般住民は自家用車を利用し、車が使えない人は全8行政区ごとにある集会所を一時集合場所とした。集会所からはバスを利用する。高齢者ら要支援者は自宅まで村有車などで出迎える。県の計画でも示された郡山市に避難する。避難経路の渋滞問題が課題となっているほか、避難住民への周知などがハードルとなっている。

■大熊町
 現在、避難が続いており、計画を策定できる現状ではないとしている。仮に避難すべき原子力災害が起こった際については「町民一人一人が避難している自治体の指示に従ってもらうしかない」としている。
 町の避難計画については、帰還時期や帰町する住民の規模がある程度明確になってきた段階で策定を進めていくという。

■双葉町
 全町避難が続いており、町民の避難先となっている市町村の地域防災計画に従い避難する方法を取るしかないとしている。町は「現状では町としての避難計画の作成は難しい」と打ち明ける。
 県の広域避難計画では同町から県南地方に避難するとしている。しかし、現在は町民の帰還のめどが立っていない上に、中間貯蔵施設が建設された場合、居住エリアが変わるため「現実味がない」としている。

■浪江町
 29年3月の避難指示解除を目標としており、避難計画の策定については解除時期の直前になる見通しだ。現状では、どの地区の町民がどの程度帰還するか予想が立たないため、詳細な避難計画を作るのが困難な状態という。担当者は「できるだけ具体的な帰還状況が見えてから策定する必要がある」としている。
 ただ、現状でも一時立ち入りの住民や復旧作業関係者などが一定数町内にいることを踏まえ、避難計画の「簡易版」を年内を目標に策定する方針で、住民や作業関係者の一時避難場所の選定などを進めている。

■葛尾村
 地域防災計画の中の一編として原子力災害避難計画を策定する予定。将来的な帰村者の数を把握できていない現状では「実効性ある避難計画を策定するのは難しい」との立場だ。
 村は除染の進捗(しんちょく)状況などを踏まえ、27年3月に実際の帰還時期を決める方針。村の担当者は「帰還状況を見極めた上で避難経路や輸送手段などを精査し、27年度内に避難計画を策定する」としている。

■飯舘村
 27年2月までに、福島市を受け入れ先とする避難計画を策定する予定。県が4月に公表した広域避難計画には、避難の交通手段や重篤な患者の移動方法などが具体的に示されていなかった。早ければ年内にまとまる県の詳細な計画を精査し、村は避難計画を完成させる。村は福島市の飯野地区や松川地区など村内から近い場所に避難する計画を進めている。学校の体育館など合わせて21施設を避難先として想定している。

■住民 しっかりした計画を 教訓踏まえた対策求める
 事故収束作業が続く福島第一原発では、配管からの水漏れで原子炉冷却が一時停止するなどトラブルが続発する。「3・11のような事態になったら...」。市町村の避難計画作りが進んでいない現状に住民は不安を抱く。
 川内村の避難指示解除準備区域に自宅がある草野勝利さん(69)は「避難計画は必要不可欠。村が今作っていると聞いており、しっかりしたものを策定してほしい」と話している。
 郡山市の借り上げアパートに避難しているが、4月から始まった長期宿泊を利用し、自宅で妻と生活している。10日に一度、郡山市に買い物に行き、大型の冷蔵庫で保管しているという。
 震災と原発事故発生直後、自宅に富岡町などから親族や知人ら十数人が身を寄せ、夜はそのまま過ごす予定だった。突然、顔をガスマスクで覆い、白い防護服を着た男性が入ってきた。「すぐに避難してください」と指示を受けたという。「とても驚いた。あんな思いはもう二度としたくない」と草野さん。
 すぐに小学校に避難し、さらに那須塩原方面の公共施設、三男が住んでいた千葉県に移動した。他県での避難生活は福島県の情報が入らないため、半年後には郡山市に移ったという。しっかりした避難計画があれば、こんなことにはならなかったとも思う。
 長期宿泊の間、自宅では庭の手入れを楽しんでいる。避難先では小さな盆栽の手入れが精いっぱいで、「やはり自宅はいいね」と笑う。ただ、避難計画など、安心して生活するための施策は十分に取ってほしいと願っている。
 原発事故に伴う避難指示が4月に解除された田村市都路町の合子地区に戻り、コメ作りに励む農業坪井久夫さん(64)は「行政には3・11の教訓を踏まえた対策を練ってほしい」と注文する。
 原発事故発生直後は自家用車で三春町の娘の家に避難した。双葉郡から殺到する避難者の車列で大渋滞した288号国道を避け、山道を走った体験を鮮明に覚えているという。
 避難解除から4カ月が過ぎても、地元に戻った人は一部にとどまる。坪井さん自身はあまり不安がらないよう心掛けているが、帰還を迷う住民には「原発が不安定な現状で、避難先を引き払うのは心配」との声も根強い。
 坪井さんは「万が一にも再避難する事態になった場合、住民の混乱を防ぐ仕組みは必要だ」と話す。

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