東日本大震災アーカイブ

東電が臭気対策費賠償 国見の県北浄化センター汚泥

 東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質を含む下水汚泥により住民が精神的賠償を求めていた問題で、東電は環境改善策として新たな賠償枠「臭気対策費」を設け、国見町の県県北浄化センターから半径1・5キロ内の町内約400世帯を対象に1世帯当たり40万円の一括支払いを始めた。県内をはじめ全国で放射性物質を含む汚泥の保管などが問題となっており、東電の対応が注目される。
 東電は今回の賠償を臭気対策費用相当分としている。国見町にある県県北浄化センターの周辺住民が、汚泥の発する異臭が窓から入るのを防ぐために購入したエアコン、空気清浄機などの購入費を対象としたとみられる。
 ただ、東電は賠償対象を同センターから半径1・5キロ内の世帯に限定した。住民側が求める精神的損害ではなく、物資的な損失の穴埋め分として賠償金を支払っている。東電福島復興本社福島広報部は福島民報社の取材に対し「個別の案件に関する詳細な回答は控える」と述べるにとどまり、対象範囲や金額を設定した基準を明らかにしていない。
 町民の代表でつくる「東日本大震災復旧復興対策推進国見町民会議」と町は昨年1月と同12月、東電に対して住民への精神的賠償の支払いを求める要求書を提出した。施設を管理する県を交え、東電と協議を続けていた。
 町民会議に参加している「環境を守る会」の佐藤三郎会長(78)は「住民に寄り添おうとした東電の姿勢は評価できる。一つの区切りになった」と話す。一方、同センターから350メートルほどしか離れていない自宅で暮らしている八巻喜治郎さん(63)は「周辺住民や地元農家は心に傷を受けた。臭気対策費は、空気清浄機などの購入費への支払いにしかすぎない」と訴え、東電の対応を批判した。
 同センターには2日現在、69張りのテント内に約2万5千トンの下水汚泥が保管されている。


■汚泥6万9000トン 県内26施設に保管

 県内では8月20日現在、県や市町村が管理する26カ所の下水処理施設に放射性物質で汚染された約6万9千トンの汚泥などが保管されている。放射性物質を含むため、多くのコンクリート製造業者や産廃業者が引き取りを拒み、大量の保管を余儀なくされている。
 このうち、約7割に上る約4万9200トンが県管理の3施設で保管されている。3施設の中で最も多くの汚泥がある県県北浄化センターでは、汚泥の体積を減らす仮設乾燥施設の供用を27年4月から開始する。乾燥処理した汚泥は、環境省が飯舘村に整備する焼却減容化施設で処理する。県管理の3施設は、26~28年度内の汚泥の搬出完了を目指している。他の市町村が管理する施設の汚泥は一部で焼却による減容化や産廃業者による搬出が続く。
 放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超す下水汚泥などは放射性物質特別措置法で国が処理するとされている。同10万ベクレル以下の焼却灰は富岡町の民間管理型処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」で埋め立て処分する計画。

カテゴリー:福島第一原発事故