県内の仮設住宅で空き室が増え、入居者の孤立化などが懸念されている問題で、県や市町村、社会福祉協議会は避難者の心身のケアや孤独死を防ぐ対策など、入居年数の経過に伴い浮上する課題への対応を迫られている。予算面の限りもあり、住民の不安解消には至っていない。防犯体制の強化も急がれる。
■復興予算
富岡町は郡山、いわき、三春、大玉の4市町村に仮設住宅13カ所を置く。三春町内7カ所の入居率は5割程度にとどまる。
一人暮らし高齢者らの見守りは、町社会福祉協議会が雇用する生活支援相談員が担う。仮設住宅の入居者減少や公営住宅への転居に伴う住民の分散化に対応するため、4月から相談員を12人増員し32人とした。
町社協の担当者は「仮設住宅では戸数が減っても見守りの必要なお年寄りが残る。支援の重要性は減るどころか増している」と話し、生活支援の態勢強化を視野に入れる。ただ、事業費は元をたどれば国の復興予算に行き着く。「国に支援拡充を求めなければならない」
■空き室の活用
空き室の増加で隣近所が不在になり、「孤独死」や犯罪の発生が心配されている。平成25年にはいわき市の仮設住宅で車数台が器物損壊の被害に遭い、避難元の2つの町が敷地内に防犯カメラを設けた。
地震などの災害時に一人暮らしの高齢者が互いに助け合い、どこに避難するかなど防災や減災対策の検討も求められる。
空き室を有効活用する動きも出ている。浪江町民が避難する福島市の北幹線第一仮設住宅では、福島大災害ボランティアセンターの学生が復興庁の事業として6月から1年間、空き室に住む。夫と入居している鎌田豊美さん(66)は「年配者が多いので若い人が近くにいると、いざという時に助かる」と取り組みを歓迎する。
南相馬市は今年度から看護師や警察官らの入居を認める「目的外貸付」を開始。鹿島区の仮設住宅の空き室を提供し、これまでに26戸を貸し出した。市は事業の有効性を検討している。
■弾力的運用
自治体政策が専門の福島大行政政策学類の今井照教授(61)は「原発事故による避難者は、元の土地と離れて長期間避難するため、自然災害と異なる対応が必要。今からでも遅くない」と強調する。
今井教授は一定数の災害公営住宅の整備は必要とした上で、「仮設にもう少し住みたい」とする住民の声が多いと指摘。仮設住宅で培った近隣との絆の維持や、退去後の居住先の選択肢の少なさなどが要因に挙げられると分析する。
「避難生活の柱である仮設住宅(の充実)に、さらに資本を投じるべきだ」とし、劣化した建物の修繕や空き室の弾力的な運用など、政府や県、市町村は住環境改善に力を注ぐべきだと訴えた。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)