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【除染作業員の犯罪1~9月167人】 多重下請けどう克服 法令順守へ対策強化 県警や業者など

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染の作業員が窃盗や傷害などで警察に摘発されるケースが相次ぐ中、県警や発注者、受注業者は法令順守の取り組み強化に乗り出した。今年1月から9月までの摘発数は167人で、前年同期を39人上回っている。3万人超とされる県内の除染従事者のごく一部だが、住民の不信感が高まれば作業が滞りかねない。下請けの作業員までいかに規範意識を浸透させられるかが課題だ。

■未然防止
 大阪府寝屋川市の殺人事件で起訴された被告が県内で除染作業に従事していたことが判明した8月以降、環境省や市町村、元請け・下請け、県警は法令順守や犯罪抑止の取り組みを強化した。
 各業者は作業員の採用面接や朝礼で法令順守を呼び掛けている。採用時に作業員に違法薬物やギャンブルの経験などを尋ねるアンケートを実施している下請けもある。
 郡山市の元請けは、郡山市、郡山署とともに今月17日から繁華街の夜間パトロールを始めた。今後、毎週土曜日に実施し、街なかでの作業員によるトラブルの未然防止に率先して取り組むという。
 元請けを通じて作業員の指導に力を入れている環境省福島環境再生本部の小沢晴司副本部長(54)は「除染が福島再生に重要な事業であることを作業員に理解してもらい、やる気とモラルを高めたい」と話す。

■県内3万人超
 県と環境省によると、現在、県内36市町村と国直轄の除染事業に従事している作業員は合わせて3万人を超えているとみられ、今後さらに増える見通し。県中地方の除染事業の下請け業者によると、作業員はどこの下請けも人手不足の状態だ。下請けの一~2社だけで必要な作業員を集めるのは困難なため、3次、4次と多重下請けで全国から作業員を集めているという。
 ある県警幹部は「作業員の数が多く、下請けの1人1人まで規範意識を浸透させるのは容易ではないだろう」と指摘する。県北地方の下請け業者は「作業員の数が増えると、どうしても管理の目が行き届かなくなる」と内情を明かした上で、「法令順守で業界のイメージを良くしないと、ますます作業員の確保が難しくなる」と危機感を募らせている。

■増える摘発
 県警本部刑事総務課によると、平成23年3月から今年9月までに県内で罪を犯し、県警に摘発された除染作業員は計520人。今年は9月までに既に167人に上り、前年同期を39人上回っている。
 今年の罪種別では窃盗が最も多く、傷害、覚せい剤取締法違反と続く。作業員が増えるのに比例して摘発も増えているとみられ、県警幹部は「作業員が飲食店で口論したり、路上で騒いだりといった、摘発に至らない事例も少なくない」と明かす。
 国直轄の除染が行われている川俣町山木屋地区の自治会長を務める広野太さん(66)は「ほとんどの作業員は真面目に働いている。寝屋川市の事件の影響で作業員の士気が低下し、除染の質が落ちないか心配だ」と嘆く。郡山市の飲食店経営の男性(47)も「作業員に感謝している県民は多い。県民の信頼を裏切るような行動は慎んでほしい」と訴えた。

【背景】
県の8月時点の調査によると、県内36市町村が実施している除染事業に従事している作業員は約1万4000人。環境省によると、10月15日現在、国直轄の除染事業に従事している作業員は約1万9000人。市町村による住宅除染の進捗(しんちょく)率は8月末時点で全体計画の65.0%。国直轄の除染対象11市町村のうち田村市、川内村、楢葉町、大熊町は面的除染を終え、残りの葛尾、川俣町山木屋、飯舘、南相馬、浪江、富岡、双葉の7市町村は平成29年3月までに除染作業を終える予定。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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