東日本大震災アーカイブ

正しい放射線教育重視 官民挙げて啓発へ 今村雅弘復興相

放射線のリスクコミュニケーション強化などについて語る今村復興相

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸6年を迎えるのを前に、今村雅弘復興相は2月28日、福島民報社などのインタビューに応じた。原発事故の風評対策や避難した子どものいじめ防止に向け、放射線の正しい知識を伝えるキャンペーンを官民挙げて展開する考えを示した。

 -現在の復興状況と今後の課題をどのように捉えているのか。

 「津波被災地のガスや水道など生活に関するインフラ復旧はほぼ完了した。道路や防潮堤の整備、住宅地の造成などの工事も進んでいる。今後は原発事故で被災した福島の復興に全力を挙げる。福島第一原発の廃炉や放射性物質に汚染された除染土壌の扱いなどは中長期的な対応が必要だ。しっかりと取り組みを進めたい」

 -今春には帰還困難区域を除いた避難区域の大部分が解除される。帰還困難区域では特定復興再生拠点の整備が始まる。

 「避難指示が解除された地域では帰還の判断材料となる医療や教育、商業施設などの生活環境を着実に整える。特定復興再生拠点の整備も同様で、帰還に必要な環境整備が欠かせない。産業・生業(なりわい)の再生を進め、雇用の場を確保しながら住民の帰還意欲を高めていきたい。古里の将来像を明確に示すことにも取り組む」

 -全国で県内から避難した子どもへのいじめが相次いでいる。復興庁としての対策は。

 「放射線に関するリスクコミュニケーションを強化する。学校などの教育現場だけではなく、全省庁を挙げ、民間企業などにも協力を呼び掛けながら早急に一斉キャンペーンを実施したい。放射線の性質などを分かりやすく伝える資料を作成し、正しい知識を伝えていく。農産物の風評対策も含めて大々的に展開する。安倍晋三首相にも協力を呼び掛けたい」

 -復興の司令塔を担う復興庁だが、省庁間の縦割り行政を改善できていないとの指摘がある。

 「被災地にある復興局と被災者とのつながりや対応には一定の評価を受けている。ただ、迅速に対応できるワンストップ体制を構築できているかどうか、組織の風通しは十分かどうかを点検したい。問題点が見つかればしっかり改善する」

 -被災地では人手や資材不足が依然として深刻だ。

 「少子高齢化が全国的に進み、地方の人口減は構造的な問題になりつつある。被災地の人手不足に対応するための当面の対策も重要だが、限られた人材の有効活用策を考える必要がある」

 -大規模災害発生時の自治体間の連携強化を求める声がある。応援職員の派遣などを制度化する考えはあるか。

 「昨年の熊本、鳥取地震では東日本大震災の反省点が生かされ、自治体間の事業連携、医療チーム派遣などでそれなりの対応ができた。ただ、今後もどのような災害が発生するかは分からない。現在の仕組みで十分な対応が可能なのか再点検する必要がある」

 -東北の観光復興をどのように進めるのか。

 「東北の観光客の入り込みは震災前の水準には戻っていない。外国人誘客とともに国内観光客の誘客に力を入れたい。食や自然などの東北の魅力をアピールしながら、観光需要を掘り起こすための施策を展開していく」

カテゴリー:福島第一原発事故