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古里に稽古場新築来月再開 「藤華新流」家元高野澄子さん

踊りで飯舘村民を元気づけたいと願う高野さん(右)

 飯舘村に新築された踊りの稽古場を備えた新居を眺めると、万感の思いが胸に込み上げてくる。「またここから始められる」。福島市岡部に避難している日本民舞踊「藤華新流」家元の高野澄子さん(74)は来年1月、古里で踊りの教室を再開する。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の避難中に患った大病を乗り越えての決心だった。
   ◇    ◇
 飯舘村飯樋地区の自宅や福島市飯野町など合わせて5カ所で長年にわたって開いていた踊りの教室は原発事故の影響で、閉鎖に追い込まれた。踊る場所を失い、気落ちしていたところに追い打ちを掛けるように、胃がんが見つかった。
 2012(平成24)年2月、胃の大部分を摘出した。闘病生活の心の支えになったのは「また踊りたい」という情熱だった。早期のがん発見が幸いし、あでやかに舞うことができるまでに体力は回復した。手術から2カ月後、福島市飯野町の集会所で念願だった教室を再開した。
 かつての生徒とバラバラに避難した後、久々に顔を合わせると、涙がこぼれた。川俣町山木屋地区から避難している主婦(83)は「皆が離れ離れになりつらい思いをしていた。教室に来れば自然と笑顔になれる。踊りは生きがい」と声を弾ませる。踊りが人の心を和ませ、気力を与えてくれることを改めて実感した。
 村の帰還困難区域を除いた避難指示は3月末に解除された。住民は少しずつ帰っているが、地域の活気はすぐには取り戻せない。「寂しい思いをしている皆さんが古里で集まれる場所をつくろう」。原発事故と病気に翻弄(ほんろう)され続けた避難生活の中、自分の心のよりどころとなった踊りの魅力を知ってもらおうと飯舘での教室再開を決めた。
   ◇    ◇
 年の瀬が迫る中、福島市と飯舘村を行き来しながら準備を進めている。避難前まで住んでいた家を取り壊して10月末に完成した自宅には、約30人が踊れる稽古場がある。踊りだけでなく、多くの人が気軽に集える場にしたいという。
 来年は家元として教室を開いて35年。夏に記念の舞踊祭を川俣町で開く予定だ。「これまで支えてくれた人に感謝を伝えたい」。夢はさらに広がる。

カテゴリー:福島第一原発事故

来年1月に教室が再開される稽古場を備えた新居

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