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【廃炉の現場】(8)第2部使用済み核燃料 コロナの影響懸念 感染対策を徹底

2021.01.24 10:29
2号機では国内初となる伸縮式の燃料取扱設備による核燃料の取り出しが計画されている

 東京電力は三月末までに福島第一原発3号機の使用済み核燃料取り出し完了を目指している。ただ、新型コロナウイルスの感染に、関係者は神経をとがらせている。入院や自宅待機で作業員らが欠ければ、計画通りには進められないためだ。

 昨年十二月に初めて作業員が感染した。今月十六日までに計八人に増えた。福島第一原発の構内では約四千人が働いており、東電は、移動経路や食事場所を分けるなどして感染対策に努めている。作業員間で感染が広がれば、一気にクラスター(感染者集団)となる恐れもある。

 東電福島広報部は「検温や消毒など感染対策を徹底し、県民に不安を与えないよう努めたい」としている。


■3号機

 3号機は二〇一九年四月に使用済み核燃料の取り出し作業が始まった。五百六十六体のうち五百十体を別の建物にある共用プールに搬出を終えた。残る五十六体の中には、持ち上げるための取っ手の変形などが確認された三十一体が含まれる。

 東電は取り出しに向けた試験を繰り返しているが、三十一体のうち八体はつり上げ困難で、七体は未着手。新たな装置の開発や工法の検討を急ぐが、有効かどうかは作業しなければ分からない。

 核燃料上部の取っ手が変形したのは、水素爆発で建屋上部が吹き飛び、落下したがれきがぶつかったためだ。隙間にがれきが挟まった核燃料もあり、つり上げが困難となっている。県原子力安全対策課は「安全面に配慮した上で、作業を着実に進めてほしい」と注視する。


■2号機

 3号機の次に取り出しを予定している2号機の核燃料取り出しについて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は「3号機の知見を反映し、トラブルに備えた仕組みの整備と確実な実施が重要」と指摘する。二〇二四年度にも着手予定の2号機の作業には国内の原子力施設で初めてとなる伸縮式のクレーンと燃料取扱機を用いる計画だ。

 2号機の使用済み核燃料プールには六百十五体の核燃料が残る。東電は当初、2号機は水素爆発がなく、建屋も原形をほぼとどめていたため、建屋上部を解体し、核燃料を取り出す計画だった。放射性物質を含んだ粉じんの飛散が懸念されたため、建屋南側に構台を建設し、側壁に最小限の開口部を設ける手法に見直した。小型化のため伸縮式の装置を採用し、レール上で出し入れする方式で準備を進めている。

 この伸縮式の装置は他の号機などで使われている門型クレーンに比べ、耐震性や安定性が下がる恐れがある。さらに、遠隔作業となるため、全燃料取り出しまでの作業期間は建屋解体による計画より長期間に及ぶ見通し。

 経験のない新たな装置による作業は入念な想定による装置の設計や訓練が欠かせない。NDFの担当者は「設備の操作や機能性を習熟することが重要」としている。


 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から三月で丸十年となる。政府と東電は、各原子炉建屋に保管されている使用済み核燃料の取り出しに向けて作業を進める。だが、事故の影響は今も大きな壁となり、行く手に立ちはだかっている。廃炉現場の課題を探る。