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【アウトドア キャンプ 自然と生きる】伝説に彩られた「聖山」 緑を突き破る巨岩 白河市の権太倉山

2021.06.06 08:28
権太倉山山頂からの雄大なパノラマを楽しむなすびさん。右奥は羽鳥湖

 山肌を覆う緑の屋根を突き破るようにせり出した巨岩に目を奪われる。一帯の岩石群は総称して「聖ケ岩(ひじりがいわ)」と呼ばれる。福島県白河市大信地区の権太倉(ごんたくら)山(九七六メートル)の南麓にそそり立ち、登山客を出迎える。

 会津仏教の開祖・徳一大師の子弟で修験者だった聖坊(ひじりぼう)がこの地で人々の無病息災と五穀豊穣(ほうじょう)を祈願したことにちなみ、名付けられたとされる。

 聖ケ岩ふるさとの森キャンプ場の道路を隔てた風穴口登山口から山に足を踏み入れる。勾配の緩やかな道を進む。みずみずしい広葉樹の葉音、落ちた枝を踏む音が辺りに響く。体が汗ばむころに、岩場に風穴が現れる。火照った顔に、かすかな冷気が心地よい。

 山腹に炭焼き小屋跡が見える。炭焼きはかつて住民の冬の収入源の一つだったという。

 大間ケ嶽(八六八メートル)を巻くように登り、権太倉山の山頂までの中間地点「馬の背分岐」に到達する。ナラなどの樹林を縫って初夏の風が届き、体を癒やす。

 最後の急勾配を上がると、山頂に着いた。眼下に羽鳥湖を従え、那須連峰や二岐山の眺望が広がる。見晴らしはいい。やや曇り空だったが、天候が良ければ磐梯山と猪苗代湖も望める。

 山の名前にはいわれがある。「大昔、山に野生の馬がいて、人々が『権太黒』と名付けた」。「源義家が奥州征伐の際、この地で忘れた馬の鞍(くら)が石と化した」-。それらの逸話から「権太倉山」と呼ばれるようになったと伝わる。

 数々の伝説に彩られた「聖山」は地域の象徴として親しまれる。登山道を管理する聖ケ岩ふるさとの森を守る会会長の金沢鶴一さん(65)は「ありのままの自然が魅力。これからも環境保全に努めたい」と話す。

 一緒に山頂に立ったタレントのなすびさん(福島市出身)は登山を続ける理由をこう語る。「自然と向き合い、共生することの大切さを教えてくれる。多くの人に、そのことを伝えていきたい」

文 鈴木信弘

写真 猪俣広視


 本県は山や湖、川、海という豊かな自然に恵まれている。その周辺にはキャンプ場、コテージなど宿泊や滞在できる施設があり、家族や友人と屋外活動を楽しめる。福島市出身のタレントなすびさんが随時参加し、新型コロナウイルス感染防止に向けた三密回避の面からも関心が高まっている外遊びの魅力をシリーズで紹介する。


■雄大な眺望楽しめる

 高山ではないですが、山頂の視界が開けています。羽鳥湖や二岐山、那須連峰など雄大な眺望を楽しめます。

福島民報社ホームページの特設サイトで登山やキャンプ場の様子を動画で紹介している。