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【二者択一の明暗 衆院選県内政党(上)】与党 拭いきれぬ敗戦色

2021.11.02 13:35

 新型コロナウイルス対策や経済対策、復興施策の進め方などが争点となった衆院選が終わった。二者択一の選挙戦で見えた県内政党の課題を追い、針路を探る。(文中敬称略)

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 第四十九回衆院選の投開票から一夜明けた一日午前、福島市の自民党県連会館に集まった県連役員は一様に険しい表情を見せた。「有権者におきゅうを据えられた格好だ」

 県内五つの小選挙区の戦績は二勝三敗。敗れた三人は比例東北で復活当選し、改選前の五議席は維持したものの、敗戦色は拭いきれない。旧民主党に政権を奪われた二〇〇九(平成二十一)年以来、十二年ぶりの負け越しだった。

 今回は小選挙区比例代表並立制が導入された一九九六年以降で初めて県内全選挙区で「自民党候補」対「野党統一候補」の一騎打ちとなった。野党共闘に対する有権者の拒否反応が起きると目算したが、政権与党への批判票を野党候補が集約しやすい構図となり、厳しい戦いが待っていた。

 野党候補一本化の手ごわさは前回の1区で味わっていた。自民前職が一万三千百五十票差を付けられて苦杯をなめた。今回も1区は同じ顔触れによる一騎打ちで「相当な危機感」(県連幹部)を持って臨み、五千五百四十六票差まで詰め寄ったが涙をのんだ。

 県連幹部の一人は「保守層を固めきれなかったのが敗因の一つだ」と分析。連立を組む公明党と協力体制を敷いたが「公明支持層にも浸透しきれなかった」という。公明党県本部幹事長の伊藤達也は「野党共闘に対抗するためには組織力をより強固にしなければならない」と強調する。

 衆院選に際し、福島民報社が実施した電話世論調査で比例代表の投票先を自民と答えた人を年代別に見ると、三十代以下が五割強を占めた一方、四十代以上は四割弱にとどまった。特に五十代、六十代が他の年代よりも自民離れが進んでいる状況が表れた。

 自民の支持基盤となっている保守層の支持が十分に広がらなかった背景には、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した県民の政治不信があると県連幹部はみる。十年七カ月余りが経過した今なお、約三万五千人が県内外に避難するなど本県の復興は途上にある。復興は着実に進んでいるものの、不満の矛先は事故当時の旧民主党政権、その後の自民党政権に対して向けられやすい。福島第一原発の廃炉では、汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出方針を巡り、県民には新たな風評の発生に対する懸念が根強い。

 自民県連は比例東北での復活当選により県内全域で衆院議員を擁する体制を維持し底力を見せた。県内各市町村の声を政府につなぐパイプを失わなかったことは「及第点」だと安堵(あんど)する。

 ただ、幹事長の西山尚利は「小選挙区での敗北は厳粛に受け止めなければならない」と現実を直視し、県民の負託に応えるための政治基盤を盤石にしようと決意を新たにする。「復興施策で課題を一つ一つ解決し、県民の理解と信頼を得ていくしかない」