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【衆院議員初登院】襟を正して国政に(11月10日)

2021.11.10 09:27

 衆院選を受けた特別国会が十日、召集され、県内からは小選挙区と比例東北で当選した合わせて九人が初登院する。総じて見れば今回は与野党の支持が拮[きっ]抗[こう]し、ともに思うように議席や票を得られず、「勝者なき選挙」になったとの印象が強い。なぜ、こうした結果になったのか。それぞれが有権者に思いをはせ、襟を正して国政に臨んでほしい。

 今回の衆院選は小選挙区比例代表並立制が導入された一九九六(平成八)年以降で初めて県内五つの小選挙区すべてで自民党候補と野党統一候補の一騎打ちとなった。ただ、小選挙区で敗れた五人のうち四人は比例東北で復活当選し、結果的に前職は全員が議席を守り、新人一人が議席を得た。

 自民は改選前の五議席を維持したものの、選挙区では二勝三敗と負け越した。勝った選挙区でも統一候補に比例復活を許したことや選挙対策で「敵失」があったことなどを考え合せると、極めて厳しい結果になったと言わざるを得ない。

 関係者からは「安倍一強」と称される党内情勢の中で長く続いてきた安倍晋三、菅義偉両首相による政権運営への嫌気、後手に回った新型コロナウイルス対策への怒り、県内的には東京電力福島第一原発事故に伴う処理水の処分方針への不満と失望などが「敗因」として聞こえてくる。

 では、野党側が勝ったのか。話はそう単純ではない。議席を得た三つの選挙区のうち二つの選挙区で前回より票を減らし、三つの選挙区すべてで自民候補に比例復活を許した。比例東北での県内党派別得票率は前回を下回った党が目立った。新人一人が比例復活を果たしたものの、とても喜べる結果ではあるまい。

 政治理念や政策の違う政党の共闘で、どのような政権が生まれるのか。政権奪取のための「野合」ではないか。そうした不安や不信を最後まで拭いきれず、政権交代の受け皿になりきれなかったとみる有権者は少なくない。

 今回の衆院選で有権者は与野党いずれにも反省を求めたのではないか。新型コロナの感染拡大をきっかけに、相も変わらぬ政治の姿があらわになり、長年にわたり積み重なってきた「国民の声や思いが届いていない」との不満が選挙結果に表れたと考えるべきだろう。

 解散から投開票まで戦後最短の選挙戦だったが、初登院する九人は県内有権者の声を聞いてきたはずだ。公約の実現は言うに及ばず、批判的な声にも応えうる政治活動を期待したい。(早川正也)