双葉町は復興まちづくり計画(第三次)の策定作業に着手した。東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)解除が来年六月にも見込まれ、居住がようやく認められる。安全・安心に暮らせる環境を整え、帰還を希望する町民、移住・定住を目指す人の暮らしを後押しする施策を展開してほしい。
双葉町の住民帰還は避難指示が出た市町村の中で最後となる。まちづくり計画はこれまで二次にわたり作成されたが、大事な時期での更新だけに、第三次計画は重い意味を持つ。従来計画の実効性を点検するとともに、居住後に起きると想定される問題を適切に解決していけるよう柔軟な中身にする必要がある。来年度から五カ年計画となる見通しで、町は来年三月の公表を目指している。
まちづくり計画は第二次まで「町民一人一人の復興」と「町の復興」を基本理念に掲げた。新市街地、まちなか再生、新産業創出、再生可能エネルギー・農業再生モデル、被災伝承・復興祈念の五つのゾーン分けに、拡張エリア、関連インフラを加えた計七つの項目で復興拠点内の居住環境整備に取り組んでおり、町は、おおむねスケジュール通り進行してきたと評価する。
六号国道東側に造成された中野地区復興産業拠点では立地企業が工場などの建設を始め、東日本大震災・原子力災害伝承館と双葉町産業交流センターが開館した。JR双葉駅の西側で住宅地、東側では町役場仮設庁舎の建設工事が進み、視察や働く人の往来が生まれつつある。社会基盤の整備が進む中で、居住人口をいかに確保するかが第三次計画の課題となる。
町民向けアンケートなどでは、JR双葉駅東側の中心市街地の行方に強い関心が寄せられている。町民の意向を踏まえ、市街地をどう再生させていくかも焦点となる。他市町村の旧避難指示区域では、建物が解体された後に更地が広がり、市街地活性化に苦労する事例がみられる。町民の古里への気持ちをつなぎとめ、まちの魅力を生み出すためにも、懐かしい景観を可能な範囲で保持する施策が求められるのではないか。
双葉町は避難指示解除から五年後の居住人口目標を約二千人としている。造成中の住宅地だけでは足りず、個人住宅の復旧や、さらなる住宅地の確保が必要だ。医療や商業施設など生活関連施設の整備も欠かせない。政府には、まちづくりのスタートラインに立った町を強力に支える責任がある。(鞍田炎)