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【県総合計画】身近な目標を掲げよう(12月17日)

2021.12.17 09:33

 二〇三〇(令和十二)年度までの県土づくりの方向性を示した新しい県総合計画が来年四月にスタートする。県の最上位計画に位置付けられ、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの再生・復興や人口減に対応した地方創生など、推進すべき項目が網羅されている。県は小中学生、高校生をはじめとする若者を対象とした特別授業を十六日から順次実施するなどして浸透を図る。県民に身近な計画となるよう期待したい。

 総合計画は地域社会づくりの理念に①多様性に寛容で差別なく共に助け合う②変化や危機にしなやかで強靱[きょうじん]③魅力を見いだし育み伸ばすーの三つを掲げた。理念をまとめた基本目標は「やさしさ、すこやかさ、おいしさあふれる ふくしまを共に創り、つなぐ」で、これまでにない、かみ砕いた言葉を使っている。

 県民に身近な計画とするための工夫として、策定段階では、小学生から大学生までが参加した意見交換会を開催した。高校生ら約三万人を対象としたアンケートを実施し、県民の意見を幅広く取り入れた。また、多くの指標を設けた点も特徴と言えるだろう。具体的な目標を示すことで、計画の進ちょく度が一目で分かる。県は一歩踏み込んで、私たち県民が何をすれば目標が達成できるのか実践例を示してほしい。

 例えば、一般廃棄物の排出量は一人一日当たりの全国平均値を下回る目標値が設定された。現状の全国平均は八六〇グラムで、本県の一〇三五グラムから二割近い削減が必要となる。目標達成のために各家庭でできるゴミの減量化、再資源化の取り組みなどを具体的に提案すれば、県民一人一人が総合計画に対する当事者意識を持つきっかけとなる。

 持続可能な開発目標(SDGs)の視点による将来像も示した。未曽有の複合災害からの復興と急激な人口減に直面する本県の取り組みは、まさにSDGsそのものと言えるだろう。SDGsという世界の共通目標の活用で、国内外への継続的な情報発信につながる。総合計画は二百ページ超に及び、本気で読み解くには根気がいる。関心の高いSDGsの項目を当てはめることで、県民が総合計画に触れる機会が増すことを願う。

 新型コロナウイルス感染症との闘いは当分続くだろう。社会情勢や県内経済などの先行きが見通せない中での計画のスタートとなる。理念の一つに掲げた「変化や危機にしなやかで強靱」な地域社会となるよう、各種指標についても柔軟に見直す姿勢が欠かせない。(安斎 康史)