東京電力福島第一原発事故の避難者が入居する県内の災害公営住宅(復興公営住宅)で、住民の孤独・孤立化をいかに防ぐかが課題となっている。古里を離れて暮らす人たちが新たなコミュニティーづくりに苦心しているところに、コロナ禍に伴う交流活動の自粛が追い打ちを掛けている。県や市町村、社会福祉協議会は連携し、住民の見守りと支援を強化すべきだ。
県によると、県内には原発事故避難者用の公営住宅が県営と市町村営合わせて四千七百五十八戸あり、今年四月一日時点で県営分には約六千三百人が入居している。このうち六十五歳以上の高齢者が約二千五百八十人で全体の約41%を占め、一般県営住宅の約28%を上回っている。二十一の市町村社協に配置されている生活支援相談員が個別訪問による見守りや交流サロンの運営に取り組んでいる。
県社協が十月に市町村社協を対象に実施したアンケート調査では、「外出や他人と接する機会が減り、体力の衰えや孤独を訴える高齢者が増えた」などの声が寄せられた。健康状態が悪化した人や生活が困窮している人の中には、行政の支援を希望する人もいるだろう。昨年、南相馬市で複数の一人暮らし高齢者が孤独死したことなどを踏まえれば、早急な対策が必要だ。
コロナ禍に見舞われたこの一年、生活支援相談員は感染防止の観点から訪問の頻度や交流サロンの回数を減らし、電話での安否確認や玄関先での面談など工夫しながら活動している。各社協はこうした事例を共有し、住民との接触を途切れさせないでほしい。通信インフラや端末を整備すれば、リモートでのお茶会や健康体操教室なども可能だが、新たな予算措置やパソコンに不慣れな高齢者への手厚い支援が課題となる。
公営住宅が立地する地域との関係を緊密にし、見守りの輪を広げることも重要だ。現在、南相馬、富岡、大熊、浪江の四市町社協に居住者と地域との橋渡し役となる避難者地域支援コーディネーターが一人ずつ配置されているが、県社協は二〇二二(令和四)年度以降に他地域に増員する方針だ。居住者に地域のお祭りやイベントへの参加を促すなど積極的に交流を図り、地域社会に解け込めるよう手助けしてほしい。
二十日現在、東日本大震災と原発事故による県内の関連死は直接死の千六百五人を上回る二千三百三十一人に上っている。孤立化などに起因する関連死をこれ以上増やさないために、あらゆる手を打つべきだ。(斎藤 靖)