X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【2021年回顧】重い越年課題(12月31日)

2021.12.31 09:11

 二〇二一(令和三)年も今日で暮れる。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸十年という節目を迎えたが、復興は道半ばの思いが強い。新型コロナウイルスは前年に引き続き感染拡大の大波を社会にもたらし、多くの課題が新年に持ち越された。

 越年課題の一つは福島第一原発の廃炉作業だ。政府は四月に構内にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、沖合一キロからの海洋放出を決めた。東電は今月に入り、原子力規制委員会に必要な施設整備の実施計画を申請した。年末になって政府は風評対策を中心とした全省庁横断の行動計画を策定した。海外での風評影響調査をするほか、地域や業界ごとの賠償基準を決めるという。

 県内では漁業者だけでなくあらゆる産業の関係者や市町村議会などから新たな風評への懸念や慎重な対処を求める声が上がっている。風評が起きることを前提とした行動計画には納得できない。そもそも、しっかりとした行動計画を示し、成果を見極めた上で実施計画を申請するのが、ものごとの順番ではないか。

 こうした対応が不信感を増幅させていることを政府と東電は強く認識すべきだ。海洋放出は二〇二三年春に予定されている。新年に政府と東電がどんな動きをするのか、目を凝らす必要がある。

 新型コロナ対策では、強い感染力が疑われる新たな変異株「オミクロン株」への備えが新年の課題となるだろう。県内では「デルタ株」の広がりやクラスターの多発を受け、今夏に過去最大の第五波に見舞われた。新規感染者数は、最多となった八月十一日判明分の二百三十人をはじめ三桁台の日が続いた。政府は本県に「まん延防止等重点措置」を適用し、県民は首都圏などとの往来自粛や時短営業などの感染防止対策を強いられた。

 現在、県内は落ち着いた状況にあるが、新年も新型コロナとの闘いが続くことは間違いない。感染の大きな波が起きないよう、マスク着用や小まめな手指消毒などの基本的な感染対策の継続が欠かせない。県は万一の感染拡大に備え、病床の確保など医療体制の拡充を進めている。

 この二年で、新型コロナから多くの教訓を得た。新年は、その経験を十分に生かし、感染防止策と経済活動の両立という難しい課題に向き合わなければならない。ワクチンの三回目接種やワクチン接種証明などの活用を通して、大きく変化する社会の先行きを見据え、柔軟に対応する力が試される。(安斎 康史)