X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【震災11年 台湾輸入禁止解除】輸出拡大の足掛かりに(2月19日)

2022.02.20 09:00

 台湾が東京電力福島第一原発事故後から続けてきた本県など五県産食品の輸入禁止措置を解除すると表明した。原発事故前は本県産農林水産物の主要な輸出先だっただけに、復興への大きな後押しになる。国と県は、これまで以上に科学的根拠に基づいた正確な情報と県産食品の魅力を世界に発信し、輸出拡大の足掛かりにしてほしい。

 台湾の解除案によると、本県、茨城、栃木、群馬、千葉五県の酒類を除く全ての食品に課してきた一律の輸入停止措置を廃止する。環太平洋連携協定(TPP)への加盟に向けて日本から一層の支援を得るのが狙いとみられ、解除の決定と発効は今月下旬になる見通しだ。蔡英文総統は、日本産食品の検査について「国際基準より厳格な措置を取る」として、解除への反対世論に配慮も示した。

 台湾の輸入禁止措置を巡っては、野党の国民党が本県などの食品を放射能汚染のリスクがある「核食」と呼び、輸入禁止解除に反対するキャンペーンを展開した。二〇一八(平成三十)年に住民投票に持ち込まれ、禁輸継続が決まった経緯がある。政争の具にされた感は否めないが、こうした動きが再燃しないよう政府は科学的根拠に基づいた正確な情報を発信し続ける必要がある。

 原発事故発生前、台湾には主に県産のモモやコメが輸出されていた。輸出量は、統計が残っている二〇〇五年度から二〇〇九年度までが国・地域別で一位、二〇一〇年度は香港に次ぐ二位だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、県産農林水産物の需要低迷が続く中、台湾への輸出が再開されれば、消費拡大にも弾みがつく。

 ただ、台湾社会での風評は根強いだろうし、十年余りの間に他の産地が売り込みを進めている可能性もある。一朝一夕で輸出量が増えるとは思えない。国と県、関係団体が連携し、現地で県産食品の安全性と魅力をPRする場を定期的に設けるべきだ。

 実際に本県に足を運んでもらう取り組みも欠かせない。県によると、福島空港の台湾チャーター便は二〇一九年に年間百二十八便の発着があり、約一万三千五百人が利用した。新型コロナ感染拡大後の二〇二〇年度から運航されていないが、収束後は本県の食を紹介するツアーを企画するなどチャーター便を活用した方策が求められる。

 中国や韓国、香港などは輸入禁止措置を続けている。台湾の解除を契機に、一日も早い輸入規制の完全撤廃を実現したい。(紺野正人)