大熊町の除染検証委員会は、今春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)の一部の追加除染を環境省に求めた。二月上旬の独自調査で、除染後も空間放射線量が避難指示解除の基準を超える地点が見つかったためだ。国は早急に線量低減策を実施し、帰還を考えている住民らの不安を解消する必要がある。
検証委の調査では復興拠点内の大部分で放射線量が避難指示解除の基準となる年間二〇ミリシーベルト(毎時三・八マイクロシーベルト)を下回ったものの、道路脇や山際の複数箇所では上回った。降雨により放射性物質の付着した土砂や落ち葉が流れ込んだことが原因とみている。
環境省は除染後、道路であれば十メートルから三十メートルの間隔で放射線量の測定地点を設けている。町内で約三万カ所に上り、年一回調べている。今回は測定地点外の場所で基準を超えたという。町の担当者は「定点の調査だけでは住民の安心にはつながらない。追加除染が必要な箇所を見逃している」と指摘している。
復興庁が先月発表した住民意向調査では帰還について「まだ判断がつかない」と回答した人が約23%に上った。帰町に必要なことを複数回答で尋ねると「除染による放射線量の低下」が約40%を占め、社会基盤の復旧、住民の帰還状況、住宅建設などへの支援に次いで四番目に多かった。
大熊町は二〇一九(平成三十一)年四月の一部地域の避難指示解除から間もなく三年を迎える。二月一日時点の住民登録のある居住者数は三百六十四人で、全体の約4%となっている。住民が増えないことには、将来の行政運営に支障が出る事態も想定される。できるだけ多くの町民に町に戻る選択をしてもらうとともに移住者を呼び込むためには、生活環境の整備や産業育成以前に、徹底した除染によって安心を確保することが欠かせないだろう。
六町村の帰還困難区域には復興拠点が設けられ、大熊町と葛尾村が今春の避難指示解除を予定している。六月以降となる双葉町、来年春頃を目指す浪江、富岡、飯舘の三町村でも除染が進められている。国は除染進捗[しんちょく]率が九割を超えたとして「おおむね完了した」との見解を示している。
ただ、大熊町と同様に今後、放射線量が下がらない場所が見つかることは起こり得る。国はこれまで以上にきめ細かく放射線量を監視し、基準を超える際には速やかに追加除染すべきだ。どれだけ経費や時間を要するとしても原発事故前の古里に戻すことが国の責務だ。(円谷真路)