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【震災11年 南相馬少子化対策】実効性高め若者増やせ(3月10日)

2022.03.10 09:00

 南相馬市は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で減少した若い世代を増やすため、出会い・結婚から妊娠・出産、子育てまで切れ目のない支援策を盛り込んだ少子化緊急対策を二〇二二(令和四)年度からスタートさせる。長期にわたる復興への取り組みと地域再生のためには将来を担う若者の活躍が欠かせない。市は施策の実効性を高め、若い世代の人口回復につなげてもらいたい。

 少子化緊急対策は、国が掲げる若い世代が望み通りの数の子どもを持てる希望出生率1・8にちなみ、「みらいづくり1・8プロジェクト」と名付けた。新規事業として小中学校の給食費無償化や男性への育休取得促進奨励金の支給などの経費を二〇二二年度市一般会計当初予算案に計上した。若年夫婦らの移住・定住増にも力を入れる方針だ。

 給食費無償化は実現すれば、保育園から中学校までが対象となる。北海道・東北地方の市では他にないという。取得者と勤務先双方に支給する育休取得促進奨励金は県内で初めてだ。先進的な制度を取り入れる姿勢を評価する。

 市によると、震災と原発事故前の二〇一〇(平成二十二)年の国勢調査で九千六百四十九人だった十五歳未満の子ども(年少人口)は、二〇二〇年には五千九十九人で、半分近くまで減った。全人口に占める年少人口の割合は県内十三市で最低の8・7%で、一位の本宮、須賀川両市の12・8%から大きく離されている。南相馬市は原発事故に伴い、小高区と原町区に避難区域が設定された。市外に避難した子どものいる家族が、現地での生活が定着して戻っていないのが年少人口が減少した要因とみられる。

 出生数も二〇一〇年に五百七十九人だったのが、二〇二一年には半数以下の二百八十四人まで減少した。二〇四〇年には百九十人にまで落ち込むと市は見込む。市は出生数を増やし、希望出生率1・8の実現を目指す。達成には産科、小児科をはじめとした医療体制の充実や経済的支援など、安心して子どもを産み育てられる環境を整備することが求められる。

 ただ、立派な制度を設けても活用されなければ意味がない。多様で手厚い支援策を市民に理解してもらうとともに、市外の避難者らにも周知するよう努め、子育て世代に選ばれるまちにするべきだ。少子高齢化が全国的に進む中、さらに状況が厳しい被災地での人口回復には困難が予想される。実現に向けて地道に息の長い取り組みを続けることが重要だ。(風間 洋)