福島県や宮城県で深夜に最大震度6強を観測した地震から一夜明けた17日、被害状況が次々と明らかになった。相馬市や新地町では家屋の損壊が相次ぎ、断水が続いている。東日本大震災以降、台風19号、昨年2月の福島県沖地震など大規模災害が相次ぐ。「もう勘弁して」。被災者は悲痛の声を上げる。災害直後の現場を取材した。
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相馬市市内には早朝から自宅の片付けに追われる住民の姿があった。市内坪田の無職遠藤幸子(ゆきこ)さん(80)は、自宅の屋根から崩れ落ちて粉々になった瓦を見つめ途方に暮れていた。震災や昨年の地震でも住宅の被害を受けたが、「これまでで一番ひどい」と驚きを隠さない。居間では食器が散乱して割れており、揺れの大きさを物語っていた。
25年前に夫を亡くし、一人で暮らしている。毎日欠かさず遺影に手を合わせ、平穏な日常を祈っていた。それにも関わらず、再び災難に見舞われた。床に落ちた遺影を拾って抱きしめ、「もう勘弁してほしい」と目を潤ませた。
沿岸部では、特に損傷の激しい家屋が目立つ。市内尾浜の無職山野辺久さん(93)は震災直後の津波で自宅が水没し建て替えを余儀なくされた。その経験を踏まえ、今回は津波注意報が出る前に避難した。「まだ安心はできない。引き続き警戒しなければ」と表情を引き締める。
市によると、市内2カ所の避難所には17日午後2時時点で47世帯の105人が身を寄せた。大規模な停電が発生したが、一部は復旧した。一方、断水は復旧の見通しが立っていない。
松川浦大橋近くにある鵜ノ尾岬トンネル付近では崖崩れが起きた。のり面が崩落し、大量の土砂が市道を覆った。市内各地で道路のひび割れが確認され、慎重にハンドルを握る姿が見られた。
スーパーなどの小売店が休業し、食料確保はままならない。先行きの見えない状況に、市民は言葉少なだった。
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新地町でも昨年2月の地震に続き、住宅の塀や屋根瓦が落下するなど被害が相次いだ。
町南部に位置する駒ケ嶺地区に住む無職荒美恵子さん(69)方では、道路に面したブロック塀の上半分が崩れ落ちた。昨年の地震ではわずかなひびが入った程度だったが、今回は大震災時と同規模の被害が出た。塀の一部は道路の中央付近まで飛び散った。「万が一、崩壊時に人が歩いていたらと思うとぞっとする」と語る。
補修には200万円程度かかる見込み。町によると、現状では自治体からの補助制度はない。荒さんは「立て続けの出費だけに、負担は大きい」と困惑する。