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被災地覆う冷たい雨、復旧作業の障壁に 住民「何度繰り返すのか」 福島県沖地震

2022.03.19 11:56
みぞれが降る中、給水車の待機所を訪れる市民=18日午後1時50分ごろ、南相馬市鹿島区
瓦が落ち、ガラス窓が割れたままの自宅を見つめ、被害拡大を心配する望月さん=18日、桑折町

 16日夜に起きた福島県沖を震源とした最大震度6強の地震で、同県の被災地では復旧作業が続いた。18日、冷たい雨や雪に見舞われ、作業の障壁となった。住民は壊れた屋根などをブルーシートなどで覆う作業に追われた。昨年二月の地震でも被害を受けた住民からは「何度同じことを繰り返すのか」と悲痛な声が上がる。断水が続く地域では降りしきる雪の中、給水の列に並ぶ住民の姿も見られた。(相馬支局長・佐久間 靖、伊達支社・春菜 孝明、南相馬支社・本間 翔)

   ◇   ◇

 「昨年の地震とは揺れの強さが違った。家がつぶれるんじゃないかと怖かった」。新地町駒ケ嶺の農業伏見春雄さん(70)はブルーシートで覆った自宅の瓦屋根を見上げた。

 昨年二月の地震では瓦の一部がずれるなどしたものの、大きな被害は免れた。しかし、今回は2階部分の瓦が大きく崩れ、室内の壁にも亀裂が入った。18日は雨予報と聞き、宮城県に住む四男和樹さん(32)を呼んで朝から応急処置を試みたが、うまくいかずに親類の瓦業者に頼んだ。午後は雨が強まり、十分な処置はできなかった。2階の一室では雨漏りが起き始めた。

 東日本大震災があった11年前、伏見さんは町職員だった。「自然災害の少ない町だったのに」。震災以降、立て続けに古里を襲った地震や水害を思い出し「もう、いつ何が起きるか分からない」とつぶやいた。

 震度6弱を観測した桑折町では、家から瓦が落ちるなどの被害が相次いだ。同町伊達崎の介護職員望月清さん(61)は18日昼ごろ、屋根にブルーシートを掛けたが、雨中の作業は危険なため途中でやめた。覆えなかった部分から室内への雨漏りが続く。

 窓ガラスも割れたままで、生活する場所は限られる。業者に修繕の相談をしたものの、同様の依頼が多く順番待ちの状態だという。望月さんは「このままでは損壊が広がる。余震が心配だ」と不安を募らせる。

 昨年二月に起きた地震でも、県内の住宅で屋根瓦が落ちるなどの被害が相次いだ。損壊した家屋の多くは復旧したが、一部は工事が完了していない。再び大きな地震被害が発生し、業者の手が回らないのが実情だ。

 相双地方のある住宅設備会社は、今回の地震の前でも労働力不足やコロナ禍による資材不足などを背景に、昨年の地震で被災した住宅の修復依頼を断るケースがあったという。同社の代表は「今回の被害も甚大で、対応が追い付いていない。復旧は長期化するだろう」と話す。

 南相馬市鹿島区は地区一帯が断水し、復旧していない。同区のパート従業員高玉佑果さん(31)は家族5人分の飲料水を求めて陸上自衛隊の給水車が待機している鹿島生涯学習センター駐車場を訪れた。料理や食器洗いなどに使う水が不足しているという。「何をするにも水が必要。早く復旧してほしい」と冷たい雪が降る中、白い息を吐きながら訴えた。