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【国際教育研究拠点】物足りない基本構想(3月25日)

2022.03.25 09:20

 本県復興をけん引する国際教育研究拠点の基本構想が明らかになった。月末までに開く政府復興推進会議で正式決定する。九月までに拠点の立地場所を決めるなど、スケジュールはある程度判明したが、目玉事業や予算規模などは不透明なままだ。既存施設の統合の話ばかりが先行している感があり、政府の本気度が形として見えてこない。

 基本構想では、立地場所が決まった後、二〇二二(令和四)年度後半からの先行プロジェクトの実施を掲げた。二〇二三年度には、施設基本計画をまとめる。将来的には五十程度の研究グループに数百人の国内外研究者が参画するとしている。敷地面積は十万平方メートルとする見込みだ。

 拠点の運営を担う特殊法人福島国際研究教育機構の設立を柱とする福島復興再生特別措置法の改正案は国会で審議されている。研究開発機能として(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(カーボンニュートラル)(4)放射線科学・創薬医療(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信-の各分野を基本としている。

 基本構想は、各分野の中心となる研究項目を挙げてはいるものの、いまだ漠然とした内容にとどまっている。内堀雅雄知事は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸十一年のインタビューで「目玉となる研究内容を打ち出す必要がある」と求めており、まだまだ物足りない。世界トップの研究者に強いインパクトを与えるような研究テーマを早急に掲げるべきだ。

 予算についても懸念を拭えない。研究開発は研究者の長期間にわたる試行錯誤の積み重ねによって成就するケースが大半を占める。現段階で見通せる予算は二〇二五年度までの震災復興特別会計(復興特会)で、その後の手当てには触れられていない。関係する各省庁を取りまとめ、司令塔機能を果たす復興庁も現状の設置期間は二〇三〇年度までとされている。

 県は新法人にふさわしい純増の予算の確保を求めている。政府は復興特会を含む財源や司令塔機能について、今後二十年、三十年後を見据えた検討を同時にすべきだ。そうでなければ、地元が期待する「世界に冠たる拠点」の実現は到底おぼつかない。

 さらに言えば、基本構想は地元の若い人材を生かす教育の充実や研究成果を地元産業として成長させる視点が不足している。被災地にとって拠点は夢と希望だ。機構の存在が地元の復興やまちづくりに貢献できるような構想でなければ、将来への夢や希望はしぼんでしまう。(安斎 康史)