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ウクライナと古里(4月12日)

2022.04.12 09:05

 双葉郡の首長の一人はウクライナの人々に思いを寄せる。東京電力福島第一原発事故で避難を余儀なくされた中、チェルノブイリ原発事故後の対応を参考にしようと二〇一一(平成二十三)年秋、調査団の一員として現地に赴いた▼住民の強制移住で消滅した自治体名を記したプレートが原発近くの中央広場に掲げられていた。数は百六十八に上った。「絶対にこのようにはさせない。必ず帰還する」と決意を固めた。交流した市民から「自分たちの経験を福島のために役立ててほしい」と励まされると、涙があふれた▼原発事故で古里を離れた人々も苦しい胸の内を重ね合わせる。「十一年たつのに、今も自分の家に帰れないのは悲しい。世界で同じことが起きませんように」。帰還困難区域出身の女性は、被災地の住民の願いを伝えるツイートを投稿する▼首長は視察最終日の光景が忘れられない。市民へのお礼に童謡「ふるさと」を歌い心を一つにした。生まれ育った土地や大切な人を案じる気持ちは世界共通のはずだ。みんな、とにかく無事でいて-。失われたまちとともに、奪われた命の名が戦禍のプレートに刻まれ続けている。遠い国の出来事ではない。