江戸はエコな、環境に優しい時代だったとされる。古着がリサイクルされ、食器、傘といった日用品の修理が盛んだった。例外はつきもの。大名の参勤交代は今風に言えば、サスティナブル(持続可能)からほど遠い▼1年置きに江戸と領国を行き来する。各藩の支出を増やし、権勢をそぐ狙いがあったという。幕府が行列の規模を決めていた。大所帯の加賀藩の場合には総勢4千人、費用は今にして4億円に及んだとの記録もある。過酷な「通勤」だった(古川清行監修・著「大名行列をしらべる」)▼いわき市で10月、行政機関が連携し「エコ通勤」の呼びかけを始める。排ガスを減らし、市民の健康増進につなげる。爽快にペダルをこげば、心も晴れる。渋滞緩和にもつながる一石何鳥もの取り組みだが、参勤交代と異なり義務ではない。市民の朝は気ぜわしい。お上の訴えは、果たしてどこまで響くのやら▼雨でぬかるみに足を取られる。橋のない川を渡るのにも難儀した。大名ご一行の道中に比べて、令和の出勤は極めて軽やかになった。いつもの「駕[か]籠[ご]」は置いたまま。数分早く靴ひもを結んでみる。猛暑を越えたエコな秋風が爽やかに吹き抜けている。<2025・9・28>