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【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第4部 鳥獣被害(31) 情報一元化の動き 「宝の山」対策に活用

2022.04.21 09:46
富岡町で開かれたネットワークのシンポジウム=2020年12月

 森や山に生息する野生動物は市町村を選んでいるわけではない。東京電力福島第一原発事故発生後、浜通りの市町村で個別に行われていた鳥獣対策に関する大学の研究を共有するため、鳥獣被害対策ネットワークが2020(令和二)年度に設立された。

 日大工学部工学研究所長の岩城一郎教授(59)が呼びかけ人となった。福島イノベーション・コースト構想推進機構や他大学との調整を進めた。各大学が得意とする分野の知識や技術、研究成果を共有し、効果的な対策を生み出す狙いがある。慶応、東京農、東京農工、東北、長崎、日本、福島の七大学が参加し、定例会での情報交換やシンポジウムを開催している。

 国や県、市町村、大学が蓄積してきたデータを共有・分析して活用する「浜通り鳥獣害データベース(仮)」の構築に向け、関係機関が検討に入った。

 2022年2月にオンラインで開かれたシンポジウムで、東北大未来科学技術共同研究センターの鈴木高宏特任教授(51)がデータベース化を提案した。野生動物の捕獲数や捕獲場所、移動ルートなどのデータは「宝の山」で、広範囲で集まった情報を一元的に管理・分析するデータベースができれば、「全国的にも例はない」と話す。

 鳥獣対策を担う人材不足などが課題となる中、こうしたビッグデータをドローンや人工知能(AI)などの最新技術と結び付けられれば、限られた人員と予算の中でより効果的な対策を講じやすくなる。

 鈴木特任教授は「地方のデジタルトランスフォーメーション(DX)のモデルケースにもなる」とも指摘する。住民の個人情報とは違い、相手が動物のため共有化は容易とし、「データを扱う自治体職員のスキル向上にも役立つ」と話す。

 環境省や県もデータの提供に前向きで、同省福島地方環境事務所の沢邦之仮置場対策課長(42)は「大学との連携は非常に大事。鳥獣対策を継続していくのに必要な人材の育成にもつながる」と期待する。

 野生動物との共生のために住民はどう関わるべきか。猪苗代町では住民が一体となり対策に取り組む地区がある。