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【選挙区割り再編】地方の声届く制度を(6月17日)

2022.06.17 08:45

 衆院選の県内小選挙区は定数が五から四に一減され、現行の五選挙区は福島、郡山、会津若松、いわきの四市を中心とした四選挙区に再編される見通しとなった。衆院選挙区画定審議会(区割り審)が十六日、岸田文雄首相に改定案を勧告した。地方の要望が国に届きにくくなる事態への懸念が市町村に広がっている。本県は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興や人口減少など多くの課題を抱える。地方の実情を政治に一段と反映させる仕組みが必要だ。

 一票の格差是正に向けた「十増十減」の定数見直しで、人口に応じて増減させる「アダムズ方式」導入によって本県の定数一減は決まった。投票価値の平等は憲法に基づく大原則であり、定数減は受け入れなければなるまい。ただし、新たな区割りに県民が納得できるかどうかは別の話だろう。

 内堀雅雄知事は今年一月、県内が浜通り、中通り、会津地方に分かれていることを踏まえ、歴史的沿革や地勢、経済圏、生活圏などの地域の一体性を最大限に考慮するよう区割り審に意見した。勧告では、現3区が二分される形となった。須賀川、田村両市と岩瀬、石川、田村の三郡が県中地方、白河市と西白河、東白川両郡が会津地方に組み込まれた。現2区の県中地方は、郡山市と本宮市・大玉村の間に境界線が引かれることになった。

 県南地方の市町村長は「単なる数合わせで境界を決めてはならない。地域の一体性を考慮すべきだ」と疑問を呈する。「連携している地域の分断は地方創生に逆行する」といった指摘も出ている。政治に対する住民の関心がさらに低下するのではないかと危惧する声も聞こえてくる。二〇一七(平成二十九)年の衆院選で、3区から4区に編入された西郷村の投票率が低下した例もある。

 小選挙区の区割り見直しは四回目で、過去三回は勧告通りに改定された。政府は秋の臨時国会に公選法改正案を提出するとみられる。地域性を念頭に審議すべきなのは言うまでもない。

 地方の人口減少は今後も続くと予想される。一票の重さを平等に保つのは当然とはいえ、このまま人口比による定数配分にこだわると、議員は首都圏などに偏り、大都市部と地方の差が際限なく拡大する恐れもある。国土の均衡ある発展を目指すのであれば、課題が山積みの地方の声がこれまで以上に国政に伝わる制度の在り方を真剣に検討すべきだ。(角田 守良)