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【参院選折り返し】学校や家庭で語ろう(7月1日)

2022.07.01 09:51

 十日投開票の参院選は折り返しを迎えた。選挙権年齢が十八歳以上となって六年たち、成人年齢も四月に十八歳に引き下げられた。十代の有権者が大人としての自覚を深め、政治に直接参加できる大切な機会である。学校や家庭などで熱心に選挙を語り、関心を高めてほしい。

 県内の高校で使われている現代社会の教科書は、選挙について「棄権は政治の現状を容認することを意味し、棄権する人は政治を批判する資格を放棄したことになる」(第一学習社)と説く。投票の重要性は学校で少なからず教えられているはずだが、投票率は低迷し続けている。昨年十月の衆院選は、県内の十代が41・98%、二十代は35・10%。最も高い七十代は74・77%で、大きな差が出ていた。

 主権者教育の出前授業で県内の高校を訪ねた際、「自分一人が投票して何かが変わるとは思えない」と話す生徒がいた。「政策が身近に感じられない」「誰が当選しても同じ」との声も聞いた。投票しない理由はさまざまだろうが、無関心層が増える事態は選挙の重みを失わせてしまう。歯止めをかける力は若い世代の手の中にある、との意識を広げたい。

 学校では、社会科の授業にとどまらず、日頃のホームルーム、校内放送など、あらゆる機会を捉えて選挙や政治の話題を取り上げてほしい。高校、大学に限らず、小中学校や家庭でも目を向けよう。文部科学省の有識者会議は、昨年三月の報告書で「主権者教育の『入口』は幼少期の頃から社会の動きに関心を持つことにある」と指摘している。

 「食べ物の値段が上がって親が困っている」「異常気象が続いて災害が怖い」「原発事故の避難者はどうなるの」…。子どもたちが身近に感じられる政治課題はいくらでもある。参院選は、この国がどのような未来を描き、どう進んでいけばよいのかを探る好機だ。新聞などに目を通し、候補者や政党の考えを吟味するのも意味がある。

 文科省は選挙権年齢の引き下げを受け、現実の具体的な政治事象を授業で積極的に扱うよう通知した。しかし、政治的中立性の取り方に迷い、ためらう教員もいるという。新聞社の出前授業を活用するなど、外部の協力を得て補う方法もある。主権者教育は社会全体で進めてこそ、多様性を増す。選ばれる側は若者に分かりやすい形で政策を示す責任がある。

 日常的に政治に触れられる環境づくりは、立候補を志す人材を育てることにもつながるだろう。(渡部 育夫)