福島市のとうほう・みんなの文化センター(県文化センター)で16日開幕する写真展「138億光年 宇宙の旅」は、高精細の天体写真で星空の美しさを伝える。監修する国立天文台上席教授渡部潤1さん(会津若松市出身)が見どころを寄稿した。
「ほんとの空がある」
高村光太郎の妻・智恵子が、住んでいた東京にはなくて、故郷の2本松市だけに「ほんとの空」があると語った言葉から生まれた、『あどけない話』という詩である。福島にはまだ「ほんとの空」が残されている。それは夜の方がわかるかもしれない。東京では星座も結べないほど星が見えないが、福島では市街地を離れれば、まだまだ満天の星が見られるからだ。
そんな「ほんとの空」のある福島には星を見に来る人も多いが、この夏は拍車がかかるかもしれない。最新の宇宙の写真展が福島市で開催されるからだ。展示されるのは、本紙のみんぽうジュニア新聞などでもしばしば紹介してきた驚くべき宇宙画像の数々。それらは現代の最新の観測装置群、例えばNASA(National Aeronautics and Space Administration、アメリカ航空宇宙局)のハッブル宇宙望遠鏡や数々の惑星探査機、日本の国立天文台がハワイに設置しているすばる望遠鏡や、欧米と共にチリに建設したアルマ望遠鏡など、世界中の最新鋭の望遠鏡群が撮影した画像だ。
138億光年かなたの、宇宙の果てのかすかな銀河から、太陽系の惑星までさまざまな時間・空間スケールの異なる天体が並ぶ。美しさと鑑賞性を重視し、選び抜かれた画像群だ。宇宙から見た地球や立体的なオーロラなどの自然現象、人類の存在を示す夜景や人工建設物の造形、探査機が明らかにした驚くべき惑星の素顔の数々、そして何よりも芸術のような深宇宙の天体群の数々。可視光だけでなく、目に見えないエックス線から紫外線、赤外線までカバーして作られた疑似カラー合成画像は、美しさだけでなく、人類の宇宙探査の集大成でもある。
これら深宇宙の天体の数々をたどり、138億年の宇宙の歴史を感じていただくとともに、宇宙の中の地球という惑星に生きていることの奇跡を実感してもらえれば幸いである。
わたなべ・じゅんいち 1960(昭和35)年、会津若松市生まれ。会津高、東京大理学部天文学科卒。東京大の大学院、東京天文台を経て、国立天文台上席教授を務めている。専門は太陽系小天体(すい星、小惑星、流星など)の観測的研究。国際天文学連合の惑星定義委員として準惑星のカテゴリーをつくり、冥王星をその座に据えた。2018(平成30)年から国際天文学連合副会長を務めている。61歳。
○概要=天体画像パネル125点、天体観測についての図解パネル15点などを展示
○会期=16日~8月21日
○会場=福島市、とうほう・みんなの文化センター(県文化センター)
○観覧時間=午前10時~午後5時(最終入館は午後4時30分)
○休館=25日、8月8日
○前売り券=1般1000円(当日券1200円)、中高生700円(同900円)、小学生500円(同600円)
○主催=福島民報社(創刊130周年記念事業)
①移動式ミニプラネタリウム体験=会期中、直径5㍍のエアドームを使ったプラネタリウムを設置する。体験料300円。
②天体望遠鏡づくり=31、8月7両日の午前11時からと午後2時から開催。体験料2000円。事前申し込みが必要
③宇宙空間AR体験=拡張現実(AR)の技術で宇宙空間を体験するコーナーを設ける
④隕石(いんせき)展示=世界各国から集めた隕石15点を展示する
⑤講演会 23日午後1時30分から。渡部潤1さんが画像から読み解く天文学をテーマに語る
○主催=福島民報社(創刊130周年記念事業)
○問い合わせ=福島民報社事業局(平日午前10時~午後5時) 電話024(531)4171へ。