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【国際研究教育機構】成功の鍵は広域連携(8月31日)

2022.08.31 09:10

 政府が浜通りに整備する福島国際研究教育機構の拠点について県は浪江町を候補地に決めた。県の提案を受けた政府が九月中にも正式決定する。機構が目指す「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」となるには浜通りを中心とした県内全域にわたる関係機関の連携が欠かせない。拠点が決まったのを機に、それぞれの役割についてあらためて検討を進めるべきだ。

 拠点の選定は、東京電力福島第一原発事故で避難指示が出るなどした十二市町村が対象となった。このうち、田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江の九市町から十五カ所が候補地として県に提案されていた。拠点は浪江町が再開発事業を進めているJR浪江駅の西側で、政府が想定する敷地面積十ヘクタール程度の用地が確保できる。県は自然災害リスクや土地取得のたやすさ、交通の利便性などの観点で聞き取りを行い、最終決定した。

 機構は福島復興再生特別措置法に基づき、国の総力を挙げて取り組むプロジェクトの推進に向けた中核的役割を担う。主な研究分野は(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(カーボンニュートラル)(4)放射線科学・創薬医療(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信-で、それぞれで世界の最先端の研究・開発を目指す。

 本拠地は決まったが、候補地として「立候補」した各市町は、それぞれが提案した強みをどう生かせるかを再考してほしい。例えば、隣接する南相馬市ならば、機構への統合が検討されている福島ロボットテストフィールドをさらに活用できるだろう。研究者の居住環境を提供する場としても期待したい。大熊、富岡、楢葉の各町には、日本原子力研究開発機構の廃炉関係施設が立地し、すでに一定の研究成果を収めている。連携することで、廃炉作業の促進に寄与できるのではないか。

 浜通りばかりでなく、福島大や福島医大、会津大といった中通りや会津地方の高等教育機関にも好影響を与えてもらいたい。福島医大の竹之下誠一理事長は「放射線科学・創薬医療」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の分野で中核を担う意向を示している。福島大、会津大の人材育成にも効果が出る仕組みづくりを求めたい。

 機構の役割を定めた新産業創出等研究開発基本計画は、総合調整を担う司令塔機能を政府内に置くと明記した。地元が望む県全体への効果の展開は司令塔機能の最も優先すべき取り組みとして推進してもらいたい。(安斎康史)