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【鉄路と生きる(9)】第1部 磐越西線 地域の象徴を守る 住民が長年駅前清掃

2022.12.22 09:47
山都駅に隣接する駅前公園の清掃に励む湯田さん(左)ら広野老人クラブ福寿会のメンバー=11月

 11月末の朝。福島県喜多方市山都町のJR山都駅に隣接する駅前公園に、防寒着をまとった住民たちが集まった。草刈り機や竹ぼうきなどを手際よく準備する。

 駅前の住民でつくる広野老人クラブ福寿会は冬期間を除いて月に一度、公園を清掃している。活動を始めて、20年ほどになる。8月の大雨で喜多方-山都駅間が不通になってからも中断しなかった。「来年の今頃は、駅の日常が戻っているかな」。落ち葉を掃き、雑草を刈る住民の手にも自然と熱がこもった。

 例年、行楽シーズンの山都駅には飯豊山の登山客が多く降り立つ。駅から約1キロの場所にある耶麻農高の生徒は放課後、駅前公園で帰りの列車を待つ。駅周辺を気分良く使ってほしい-。会員はそんな願いを込めて美化活動を続けてきた。

 大雨による不通や減便の影響で、駅の利用者は少なくなった。それでも、「多くの住民が磐越西線にお世話になってきたし、駅はシンボルだから。守っていく気持ちは変わらない」。福寿会会長の湯田康男さん(81)は目を細める。

 会員の多くは山都で生まれ育ち、鉄路の歴史と共に人生を歩んできた。

 「おしくらまんじゅうをしているようだった」。山田節子さん(81)は青春時代の光景を今も鮮明に思い出す。市中心部の喜多方女(現喜多方)高まで鉄道で通った。平日朝の一番列車は通学する生徒であふれかえっていた。車の免許を持たないため、大人になってからも磐越西線を生活の足に使ってきた。

 地元には1世紀前の完成時、東洋一の規模と称された「一の戸橋りょう」がある。長さ445メートル、高さ約20メートルの堂々たる建造物だ。「山都の鉄橋」として親しまれる。清野由美子さん(80)は山都町商工会(現きたかた商工会)の女性部長だった15年ほど前、行政と連携して橋りょうのライトアップ実現に奔走した。「橋を生かし、山都の名を広めたい一心」だった。

 共に年月を重ねてきた鉄道とのつながりが、会員一人一人の活動の原動力になっている。

 山あいのまちは高齢化が進む。福寿会の会員は現在、73~89歳の16人。高齢を理由に退会するケースもある。活動の継承には課題もあるが、湯田さんは「清掃を通して駅を守っていく大切さを訴え、賛同の輪を広げたい」と前を向く。

 「鉄道の廃止は過疎化を進めてしまう」と懸念し、鉄路の在り方を巡る議論の行方を注視する。「鉄道を維持する前提で、何が必要かを話し合う必要がある。住民が力を合わせれば、解決策はある」