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【復興相更迭】任命責任被災地に示せ(12月27日)

2022.12.27 08:59

 現政権は荷崩れ状態にあると言うほかない。秋葉賢也復興相の更迭で閣僚辞任は10月以降、4人に達する。秋葉氏に対して岸田文雄首相は今回も説明責任を求めるのに終始した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地に背を向け、釈明に追われる事態を放任してきたようなものだ。問題を瀬戸際まで長引かせ、結局は後手に回る構図をなぜ繰り返すのか理解に苦しむ。復興はもとより国政の指揮権者としての資質を自ら厳しく問い直してもらいたい。

 秋葉氏を巡っては、自身の政治団体が家族に事務所賃料として計約1400万円を支払い、受け取った側は確定申告していなかった。身内が代表だった政治団体への600万円の寄付も判明した。昨年の衆院選で秘書に報酬を支払った公選法違反疑惑も報じられ、次男が秋葉氏の名前入りたすきを着けて街頭に立った問題も指摘されていた。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体との接点も取り沙汰されるようでは、復興相としての本業どころではなかったろう。先月下旬の県内視察が国会対応で延期される事態も招いている。

 被災地の復興は国策の根幹であり、停滞は許されないとの意識が岸田首相にあれば、早期の収拾に動いて当然だ。山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相の更迭で再三、任命責任を口にしたが、国民に伝わる行動で示さなければ、言葉だけでしかない。秋葉氏の更迭に当たり、自らの責任とこれまでの姿勢を顧み、今後の政権運営にどう生かすのかを明確に語る必要がある。

 今回の判断の背景には、来年1月召集の通常国会への影響を避けたい自民党内の思惑もあるという。防衛力強化を最優先課題にした114兆3812億円に上る2023(令和5)年度予算案の審議を控え、火種を取り除こうとするのが国会対策の常道ではある。とはいえ、政府、与党は被災地への影響こそ第一に考えるよう求めたい。

 震災と原発事故発生後、復興相はおおむね組閣や改造のたびに変わり、失言で辞任した例もある。秋葉氏は宮城県出身で、同じ震災被災地の実情を知り、生の声を政策に反映できる適任者として期待されただけに残念だ。

 福島第1原発処理水の海洋放出、2025年度の第2期復興・創生期間終了後の財源確保をはじめ、防衛費への復興特別所得税の一部転用など新たな課題も浮上している。後任の復興相は地に足を着け、被災地最優先の姿勢で臨んでほしい。(五十嵐 稔)