JR東日本公表の利用者の少ない地方路線に該当する磐越東線の利活用に向け、県は今年度内に「磐越東線活性化対策協議会(仮称)」を沿線市町と共に設立する。
協議会は約40年前の国鉄改革時にも沿線地域に発足したが、現在は活動実態がない。各地で地方路線を巡る議論が再燃しようとしている今、地域とJRなどの関係機関が協調し、実効性ある取り組みを実現できるかが重要となる。
協議会は県と、沿線の郡山、いわき、田村、三春、小野の5市町で構成する見通し。協議の場にはJR東にも参加を求める。通勤、通学、観光など複数の観点から、効果的な対策の実行につなげるのが狙いだ。県は任意の組織体とする方針で、地域公共交通再編に向けて政府が10日に閣議決定した関連法改正案に記された国主導の「再構築協議会」とは異なる。
内堀雅雄知事は3日、県内町村長との意見交換で、磐越東線を含む県内JR路線について「存続前提で取り組む」と強調した。従来の方法にとらわれない視点も含め利用者増への対応を検討する考えを示した。
県は各駅の利用者数などのデータに基づく現状分析を重視する考えで、県生活交通課の担当者は「有効な手だてを講じるため、実態を冷静に見極めたい。そのためにもJRには、積極的な情報開示を求めていく」と話す。議論の過程で、地域の商工団体などにも取り組みに加わってもらう形を想定している。
JR東公表の赤字区間の小野新町駅がある小野町の村上昭正町長は「利用者減の状況を見過ごしてきた事実は地域として反省しなければならない」とし、「JRに理解してもらえる取り組みを地元から提案したい」と語る。
地方路線の在り方を巡っては昨年7月に国土交通省の有識者検討会が再構築に関する提言を公表。2023(令和5)年度政府予算案には、社会資本整備のための交付金が鉄道やバスの施設整備にも使える仕組みなどが盛り込まれた。
公共交通政策が専門で、有識者検討会の委員を務めた名古屋大大学院環境学研究科の加藤博和教授(53)は「過去に例がないほど、公共交通が国の最重点項目になっている」と中央での動きが活発化している現状を説明する。
地域の実情に合う対策の実現には、地域公共交通活性化再生法に基づいて自治体が設置できる法定協議会が有効と説く。政府予算案の各種事業も法定協による対応が前提となるためで、「(10日に政府が改正案を閣議決定した)関連法の改正を待たずに議論でき、鉄道を残す場合にも支援を受けられる。『早い者勝ち』と考え、早急に議論を始めるべきだ」としている。