東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年の月が巡ってきた。これだけの歳月が経過しても、避難の影響で体調を崩すなどして亡くなる「原発事故関連死」は後を絶たない。県の集計では、2月末現在の関連死者数は2335人で1年前から4人増えた。長期避難による心労などが被災者を苦しめている。
地震や津波による直接死は1605人で、関連死は発生から2年後の2013(平成25)年3月の時点で、直接死を上回った。その後も関連死だけが増え続け、全体の死者の6割近くに達する。関連死認定の地域をみると原発事故で避難指示が出るなどした12市町村が9割以上を占める。
関連死の認定を受けると市町村から災害弔慰金が支給される。直接死に対して支払われていたが、1995年の阪神大震災の際に仮設住宅で心労を抱え命を落とす人が相次いだのを契機に関連死の概念が広がった。2004年の新潟県中越地震では「発生後、半年以上経過すると、関連死ではないと推定される」という「長岡基準」が生まれ、その後の指標となっていった。
関連死認定の考え方は震災・原発事故によって大きく変化した。避難先は県外を含む遠距離で、長期間に及ぶ。原発事故で設定された避難区域内には、自宅や庭などが残り、朽ちていく。住み慣れた古里を思い心を閉ざす避難者は孤立し、心身ともに厳しい環境に置かれてきた。こうした状況を踏まえ、各市町村は「長岡基準」を越えて関連死の認定を続けている。
この流れは、のちに発生した災害に影響を及ぼしている。2016年4月の熊本地震では、直接死50人に対して、関連死の認定は半年経過後も増加し、220人近い。全体の死者のうち関連死は約8割を占め、関連死を防ぐ対策の充実はより重視すべき課題となってきている。
原発事故による帰還困難区域が残る本県の避難者は約2万7800人に上り、うち約6400人が県内で暮らす。避難生活を支援する県社会福祉協議会の調査では、復興公営住宅に入居する6割は単身世帯で、さらにその6割は60歳以上という。同協議会は各市町村の社会福祉協議会と連携して被災者の訪問活動を継続するなど、孤立を防ぐ活動を展開している。
関連死を防ぐには、帰還困難区域を一刻も早く帰れる地とし、避難者の苦痛を取り除くとともに、県や市町村、社会福祉協議会の見守り活動が欠かせない。命を守り抜くため、関係機関の一層の努力が求められる。(安斎康史)