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【震災12年 国際研究教育機構】県民本位の活動充実を(3月4日)

2023.03.04 09:05

 政府が4月1日に設立予定の福島国際研究教育機構(F-REI)の中期目標案を巡り、内堀雅雄知事は地域に根差した取り組みの推進を強く要望した。機構は世界最先端の研究開発に挑むとしているが、本来の目的は本県復興の実現であることを忘れてはならない。地域の声をしっかりと受け止め、県民本位の活動を充実させてほしい。

 政府は事業に地元の意見を反映させる「新産業創出等研究開発協議会」を5月に新設する。機構と県、東京電力福島第1原発事故で避難区域が設定された県内15市町村、大学、高専、関係省庁などで構成する。地域の課題や意向を研究開発などに取り込む調整の場に位置付けられている。法律に基づく組織であり、自治体が公式に意見などを伝えられる機会ともなる。地域の復興につながる議論を期待したい。

 協議会には、広域連携と研究開発の二つのワーキンググループを置く方針だ。機構が手がける世界水準の研究開発の成果を地元の産業界や人材育成に還元するとともに、効果を全県的に波及させる壁は高いと言える。産業力の強化は企業の集積を生み、移住や定住も促す。機構と地域は結び付きを強め、戦略性を持って臨むべきだ。

 6月以降、15市町村での座談会が順次予定されている。初代理事長に就く山崎光悦氏ら機構幹部が出向き、車座対話で事業者や若者から現場の生の声を吸い上げるという。企業などが持つ技術や知識を把握し、産業面での連携につなげる狙いもあるようだ。地元事業者が国家プロジェクトに参画する道を開く視点も大切だろう。

 地域の信頼を得るには、将来の展望などを具体的に示す必要がある。例えば、研究開発に欠かせない予算の確保について、政府は昨年12月の復興推進会議で、今後7年の事業費総額を1千億円程度と決めたが、今のところ財源の裏付けは示されていない。規模ありきの提示になってはいないか。既存の復興関連予算から転用し、他の事業に支障を与えたら本末転倒だ。中長期的な枠組みでの予算確保を求めたい。

 機構は設立後、中期目標を踏まえた中期計画と年次計画を作成し、目標の具体化に着手する。浪江町に整備する本拠地の基本計画づくりにも乗り出す。各種計画に地域の意見や要望を反映する余地はまだまだ残されている。県民と共に歩む「創造的復興の中核拠点」を築くためには、地元自治体の積極的な関与が欠かせない。(角田守良)