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【震災12年 ホープツーリズム】県内に波及させて(3月6日)

2023.03.06 09:50

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みを学ぶ「ホープツーリズム」の参加者が急増している。県は新年度、さらなる誘客につなげるためのサポートセンターを富岡町に新設する。浜通りを核に中通り、会津地方へ波及させ、県内全体の振興に弾みをつけてほしい。

 ホープツーリズムは世界で唯一、地震、津波、原発事故の複合災害に見舞われ、深刻な風評被害も受けた県内の現状と、復興への動きを伝える機会として、県が2016(平成28)年度から推進している。双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館、浪江町の震災遺構請戸小、南相馬市の福島ロボットテストフィールドなどの施設視察や見学に加えて、地域住民との対話と交流、ワークショップなどが組み込まれている。

 2017年度は20件で597人が参加した。その後の2年間は千人前後だったが、2020(令和2)年度は63件で3078人、2021年度は141件で9848人と急激に増えた。2022年度は1月末時点で267件、参加者は1万5937人で、前年度の1・6倍となっている。このうち、教育旅行は159件で、全参加者数の8割に達する。研修で訪れた企業などは107件で、総件数の4割を占める。一層の拡大に向けては、教育旅行と併せて企業の対応が鍵になる。

 人口減少や地域活性化、エネルギー問題などは全国的な課題だ。企業や団体の利用が増えているのは、復興の取り組みが課題解決への先進事例と受け止められていることが背景にある。案内役を務められる人材の確保は急務と言える。県が富岡町に開設するサポートセンターには職員3人程度が駐在し、ツアーの企画や旅行行程の調整、同行などの業務に当たる。案内役は現在、十数人おり、さらに発掘するとしているが、幅広い分野に対応できる人材育成が欠かせない。

 国と県は、新年度から浜通りの海を素材にした「ブルーツーリズム」の商品開発に力を入れる。黒潮と親潮が交わる潮目の海に育まれた魚介類を食べながら、釣り、サーフィン、海水浴なども体験できる滞在型個人旅行向けのツアーとなる。新たな客層を呼び込む受け皿として全国に発信してもらいたい。

 県内3地方の特性を生かしながら、中通りや会津地方で実績のある農業体験を柱としたグリーンツーリズム、キャンプやバーベキューなどのアウトドアブームとホープツーリズムを連携させた取り組みも求めたい。(安島剛彦)