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【震災12年 復興公営住宅】高齢者の孤立防いで(3月8日)

2023.03.08 10:04

 東京電力福島第1原発事故の避難者らが暮らす復興公営住宅(災害公営住宅)で、避難の長期化に伴う入居者の高齢化、孤立などが大きな課題となっている。古里から離れた高齢者らが安心して生活できるよう支援の充実が求められる。

 昨年11月1日現在、県内外への避難者は約2万7800人に上る。県内には約6400人が避難し、多くは復興公営住宅を利用している。

 県社会福祉協議会は2022(令和4)年度、県内にある復興公営住宅72団地、約5千戸の全住民を対象にした初の生活実態調査を始めた。初年度は郡山市の17団地570戸でモデル調査した結果、入居者がいる460戸のうち272戸、59・1%が1人暮らしだった。70代が29・4%で最も多い。60代は20・6%、80代は15・8%、90代は3・3%となり、7割近くが60代以上の世帯だった。

 複数で暮らす188戸についても65歳以上の高齢者のみの世帯が27・7%、65歳以上の親と単身の子どもの世帯が17・0%で、高齢者世帯が半数を超える実態が浮き彫りになった。原発事故に伴う避難をきっかけに世帯が分離したのに加え、若い世代は転居や自宅の再建に踏み出す傾向にある。こうした事情が単身の高齢者世帯の割合が高い要因ではないかと、県社協は分析する。

 「医療福祉サービスを利用せずには日常生活を送れない」との回答は190世帯、41・3%に上った。新型コロナ禍で社会との接点が希薄になった人も多い。引きこもりがちになれば体調を崩し、要介護者の増加につながる懸念もある。高齢者の孤立や孤独を防ぐには、団地が立地する地域社会との結び付きを強める必要がある。

 県社協は昨年4月、入居者と地域をつなぐ「避難者地域支援コーディネーター」を新設し、県内17社協に計26人を配置した。団地のある地域の町内会などとの関係を築き、避難元や避難先の社協と連携して住民が交流できるサロンやイベントの開催、見守り活動などに力を注いでいる。さらに、各社協の生活支援相談員が情報を共有することで、点から面への支えにつなげている。

 全世帯への生活実態調査を通して、それぞれの復興公営住宅が抱える課題が見えてくるはずだ。買い物をする場所が近くにない、病院までの交通が不便といった悩みや困り事を広くすくい上げ、団地が立地する地域全体の課題と捉えて暮らしの改善に取り組んでほしい。(湯田輝彦)