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【震災12年 避難区域】住民帰還の道筋示せ(3月10日)

2023.03.10 09:10

 東京電力福島第1原発事故に伴い、富岡、浪江、飯舘の3町村の帰還困難区域に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が今春、解除される。居住の再開や生活環境の向上など課題はあるにせよ、復興は一歩前進する。焦点は復興拠点外をどう再生させるかに移る。国は避難指示解除の道筋を早期に示すとともに、住民帰還や地域の活力につながる支援策を強化すべきだ。

 国は、復興拠点外で暮らす意向を持つ住民の2020年代の帰還を目指す方針を決定し、戻るかどうかの調査を進めている。双葉、大熊両町の3行政区の一部は特定帰還居住区域に指定し、面的な除染などを実施する見通しだ。住民の思いをしっかりとくみ取り、除染や社会基盤の整備を急いで避難指示解除をできるだけ前倒しする必要がある。

 住民が居住可能な地域は拡大しているものの、帰還困難区域全域の避難指示解除は見通せないままだ。帰還希望者の周辺のみに除染が限定されれば、生活できない地域がまだらに残りかねない。近隣に帰還困難区域がある状態では、古里での生活を希望しても二の足を踏む懸念がある。

 富岡町の担当者は「帰還困難区域が完全に解消されなければ帰還は加速しない」と全体の除染や生活環境の整備を求める。国は被災地に寄り添い、全域の除染や家屋解体の財源確保に加え、避難指示解除までの行程と地域振興策を早い時期に示すのが道理だ。

 避難区域を巡っては、これまでに避難指示解除準備、居住制限の2区域、葛尾、大熊、双葉3町村の復興拠点などの避難指示が解除されている。ただ、長期避難により、必ずしも住民の帰還に結び付いていない現実もある。

 富岡町は住民生活が再開して6年を経ようとする今も、居住者は東日本大震災発生前の住民登録者の2割弱に当たる約2100人で、半数を町民以外の移住者らで占める。復興拠点の避難指示解除に向けた3日の町議会全員協議会では、解除後のきめ細やかな除染や宅配など生活環境の向上を求める意見が相次いだ。議員の一人は先行解除区域の国の一連の取り組みは不十分だとして「われわれは一度裏切られている」と一層の支援の必要性を訴えた。

 避難指示が解除されたとしても即座に復興を遂げられるわけではない。必要最小限ではなく、充実した生活が営めるよう国、県は避難指示解除地域の帰還状況を丹念に検証し、これまでの政策の足らざる部分を補う支援策を講じてもらいたい。(円谷真路)