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国鉄川俣線(5月23日)

2023.05.23 09:10

 国鉄が1987(昭和62)年に民営化される15年前まで、福島市の東北線松川駅から川俣町につながる鉄道があった。わずか12・2キロの川俣線。特産の絹織物を送り出す路線として1926(大正15)年3月に開業した。しかし、赤字が積もり、1972年5月に廃止された▼線路の一部は道路に転用されたが、ほとんどは草木に埋もれた。列車を引いた蒸気機関車「C12」が岩代飯野駅跡で、かつての駅前を静かに見守る。終点には「岩代川俣駅跡」と記した石碑のみが残る▼福島市に住む男性は廃線の数日前、小学生の時に福島駅から岩代川俣駅まで乗車した記憶を持つ。川俣線内は立ちっぱなしだった。その時ばかりは別れを惜しむ人で混んだのだろう。愛着はあっても、普段の利用にはつながらなかった。100円の収入を上げるのに434円の経費がかかったと、当時の福島民報が報じている▼国鉄の後を継いだJRバス東北は福島駅と川俣町の間で、水素を使う燃料電池バスを先月から走らせている。排ガスを出さず、脱炭素を目指す。「国鉄のお荷物」とやゆされた赤字ローカル線の終着地は、半世紀が過ぎた今、地球に優しい近未来バスの出発地に変わった。<2023・5・23>