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【自衛隊員小銃発射】動機、背景徹底究明を

2023.06.15 09:17

 岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で14日、自衛官候補生の男(18)が隊員3人を銃撃して死傷させた事件は、自衛隊への信頼を大きく揺るがしかねない。犯行の動機や経緯、背景の解明を急ぎ、再発防止を徹底する必要がある。

 陸自や岐阜県警などによると、殺人未遂容疑で逮捕された男は3人を小銃で撃ち、25歳の隊員と52歳の教官が死亡、別の25歳の隊員が負傷した。調べに対して教官を狙ったと供述している。隊員2人は教官との間にいて、妨げになったため撃ったとも話しているという。計画的か、衝動的かは捜査を待たねばならないが、供述通りならば強い殺意も感じられ、慄然[りつぜん]とする。国家の安全と国民の命を守る自衛隊で起きた事態に戦慄[せんりつ]さえ覚える。

 男は4月の採用で、任期制自衛官になるため3カ月にわたる基礎訓練を受けていた。自衛隊は隊員不足が慢性化し、候補生の年齢制限を緩和した経緯がある。再発を防ぐ上では、入隊前の身上把握など採用面で問題はなかったかにも踏み込んだ究明も求められよう。

 昨年は女性隊員への性暴力が本人の告発によって発覚し、全自衛隊への特別防衛監察に発展した。防衛省は全国で問題が起きるたびに再発防止を徹底させてきたはずだ。監督責任が改めて問われる。各駐屯地による隊員の管理体制も等しく点検しなければならない。

 沖縄県宮古島付近で今年4月、陸自のヘリコプターが墜落し、当時の第8師団長ら10人が亡くなった痛ましい事故の動揺は、組織や関係者に今なお尾を引いているだろう。今回の事件は、最前線で真摯[しんし]に職務に当たり、災害対応などで信頼を築いていた自衛官を著しく傷つけ、さらなる動揺も与えかねない。

 ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の核開発・ミサイル発射、緊張下にある米中対立、台湾情勢など、日本を取り巻く情勢は複雑化している。政府は、2023(令和5)年度から2027年度までの5年間で総額43兆円を防衛費に投じる異次元の軍備増強にかじを切った。増税による財源確保が取り沙汰される中、問題の根を断たなければ国民、県民の理解は得られまい。危機感を持って対処してもらいたい。(湯田輝彦)