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【双葉帰還開始1年】住居の確保にも注力を(8月29日)

2023.08.29 09:25

 東京電力福島第1原発事故に伴い、双葉町に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除され、30日で丸1年を迎える。居住者は徐々に増え、親睦団体を結成して夏祭りなどで交流を深める試みも始まった。町はこうした取り組みを支援し、避難を続ける町民や移住希望者に「楽しい」と思ってもらえる地域づくりを官民一体で推し進める必要がある。

 親睦団体は、JR双葉駅西側の町営住宅の入居者を中心にした約40人で構成している。避難区域が設定された12市町村で最後に居住できるようになった町には商業施設や飲食店が少なく、生活基盤の再建は十分とは言い難い。足りない点を嘆くのではなく、居住者の絆を強め、多くの人を呼び込もうと芋煮会、餅つきなど季節に応じた催しを企画するとしている。

 夏祭りであれば会場の確保や避難住民への周知、餅つきや芋煮会でなら町産食材の提供など、町や町社会福祉協議会などが後押しできる面は多々あるはずだ。町内で暮らす住民は高齢者が多い。将来的には見守りや困り事の相談など福祉の増進に向けた活動も担ってもらえるよう、しっかりとした組織づくりを手助けしてほしい。

 町で住民の居住が再開しているのは、復興拠点の双葉駅周辺と産業拠点の浜野・両竹地区で、合わせて町面積の約15%を占める。避難指示解除時は、準備宿泊の8世帯13人だった居住者は1日現在、68世帯86人に増えた。町は2030年ごろの居住者を、帰還住民1400人を含む約2千人とする目標を掲げている。達成に向けては、住民らが楽しめる催しの企画や商業施設などの生活環境の向上はもちろん、十分な住居の確保も欠かせない。

 産業拠点に進出した企業からは、従業員の宿舎として賃貸住宅やアパートの整備を求める声が上がっている。復興拠点内の家屋は解体された例が少なくない。元の所有者が古里へ帰還するにしても、賃貸物件を新築する場合でも、建築資材の高騰などで二の足を踏む事態が起きているという。復興を進める上では更地の有効活用も不可欠だ。国は、被災地の再生を支える人々が町内で安心して暮らしていけるよう住居対策にも注力すべきだ。(円谷真路)