福島県浪江町は福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)の立地を見据え、外国人研究者らと共生できる町を目指す。整備前から外国人の往来・滞在が増えるとみて、宿泊施設の応対力を高めるとともに、10月から多言語の案内板や多文化を伝えるガイドブックを備える。利用時の要望や課題をくみ取った上で、より効果的な接客や表示の方法を探る。来年度は他業種にも対象を拡大。町民向けの英会話教室も開くなど、町ぐるみで国際コミュニケーション能力を浸透させていく。
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町はエフレイの本施設が立地されるのに伴い、研究者や家族ら町を訪問・滞在する外国人が増えていくと見込み、国際化に対応する事業に着手した。ホープツーリズム目的のインバウンド(訪日客)もコロナ禍から回復傾向にある。海外の人々が言語や生活習慣の違いで不自由さを感じず、安心して快適に過ごせる地域づくりに力を入れる。
今年度は「福島いこいの村なみえ」や民間ホテルなど町内5カ所の宿泊施設を事業の対象とし、従業員を対象に外国人客の接客に関する研修を既に実施した。10月には文化や宗教によって異なる食習慣やマナーをまとめたガイドブックを配布し、知識を共有してもらう。英語、中国語、韓国語を並記した案内板を施設内の各所に配置するとともに客室内の機器類に関する説明文を備える。共通の絵文字「ピクトグラム」の活用も検討する。
各施設では外国人利用者からアンケートを集め、空調機器や照明器具の操作方法、食事の原材料表示など幅広い観点で要望や困りごとを洗い出す。案内方法などを改良しながら来年度以降は飲食店や小売店、公共施設などに取り組みを拡大し、町全体の接客の質を底上げする方針だ。
並行して町民向け英会話教室を月1回開く。受講者が学びたい内容を調べながら、外国人とコミュニケーションする力をはぐくむ。
町は多くの外国人研究者が暮らす県外の先進地を視察するなどして、受け入れ環境充実のために必要なノウハウなどを調べている。町市街地整備課F―REI立地室の横山芳幸係長は「エフレイに携わる外国人研究者や家族が安心して過ごせる環境を整えるとともに、街中が活気づくよう取り組む」と決意を示した。