浪江町は、福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)がJR浪江駅西側に整備されるのに対応し、研究者らの町内居住に着目した新たなまちづくりに乗り出した。本施設など全機能が稼働する2030(令和12)年度以降は関係・交流人口の大幅な拡大が想定される。エフレイを核にしたまちづくりの課題は住居、道路環境など多岐にわたる。研究者の生活基盤を向上させるとともに、移住や帰還の促進にも結び付く構想をまとめてもらいたい。
川添地区約16・9ヘクタールに本部機能、研究・実験機能を備えた施設などが順次、建設される。最大50グループの計約500人がロボットやエネルギーなど5分野の研究を担う。復興庁は、施設に関連した雇用の波及効果は約5千人に上ると試算している。
町は駅東側への公営住宅、交流施設の整備、商業施設の誘致を柱にした計画を昨年3月にまとめた。その半年後にエフレイ立地が決定した経緯がある。既存の計画を土台にしつつ、学会開催や視察、産業集積など施設の効果を見越して、より広範な古里再生の方向性を示す必要がある。
復興庁は、エフレイに地域との連携・交流機能を備えるとしているが、全体像はまだ検討段階にある。町が駅西側に誘致を目指すホテルの客室数や会議に必要な機能をはじめ、研究者向け住居の間取りなども国と十分に情報を共有しながら煮詰めていきたい。住民が施設に理解を深める場や町並みとの調和など、地元が望む施設整備に向けた働きかけも続けるべきだろう。
交通環境の改善に向けては、施設周辺のみならず、いわき、仙台両市からの利便性を高める視点が欠かせない。全国、世界からの来訪を考慮すれば、福島空港からのアクセスの向上や、JR常磐線の臨時列車を含めた運行の在り方も検討すべき課題と言える。
施設の研究者は年々、増えていくと見込まれている。町内では宿泊施設の案内表示を多言語化したり、町民向け英会話教室が開かれたりするなど、外国人研究者らを迎える機運が盛り上がっている。ハード、ソフト両面でまちづくりを進めていくには安定的な財源確保が不可欠だ。復興を目指す被災地に対し、国は手厚い支援を続けるよう重ねて求めたい。(円谷真路)