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【日本産水産物】県民挙げて消費拡大を(10月16日)

2023.10.16 08:55

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴う中国の輸入規制を受け、ホタテやナマコなど日本産水産物への影響が深刻さを増している。県は本県産に限らず、販路を断たれた県外の水産物に対する支援を呼びかけ始めた。漁業関係者の苦境に思いを寄せ、県民を挙げて消費を盛り上げていきたい。

 農林水産省によると、8月の中国向け水産物輸出額は36億円で、前年同月より65・7%減少した。8月下旬から全面的な輸入停止に踏み切るなどの規制をしたためで、9月以降は一層の減額が見込まれる。青森県では、輸出しても買い手がつかないとの理由で、漁協が10月以降のナマコ漁を見送った。海洋放出の波紋は今も広がり続けている。

 政府が中国を相手に粘り強く交渉すべき問題ではあるが、解決の道筋は見通せない。政府は輸出先の転換を目的にした支援策を打ち出したものの、新たな加工機器の導入費用は高額で、作業に当たる人手も不足しているなど課題は少なくない。県民や国民一人一人が何ができるかを考えるときだ。まずは水産物を積極的に買い求め、漁業関係者のなりわいを後押しする必要がある。

 本県沖で取れた常磐ものは、代表格のヒラメなどが多くの人に買い支えられ、市場価格は安定している。県は「処理水問題は福島県だけでなく、日本全体の問題」と繰り返し強調してきた。本県に向けられた応援を、今度は全国に返したい。

 県は5日、県商工会議所連合会と県商工会連合会、県中小企業団体中央会、JA福島中央会、県旅館ホテル生活衛生同業組合の5団体に日本産水産物の活用促進を要請した。どの団体も原発事故の風評にさらされてきた経緯があり、全面的に協力する考えを示している。

 加盟する小売店や飲食店、宿泊施設などが水産物をまとめて購入する際には流通業者の協力が欠かせない。行政は安定した販売網を構築するための取り組みを急がなくてはならない。

 経済団体とともに消費者団体や教育機関、メディアなどとも連携すれば活動の幅はさらに広がるだろう。輸出入に頼らず、地元の農水産物を消費する「地産地消」の定着にもつながる。(角田守良)