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【中間貯蔵施設】たった22年しかない(10月17日)

2023.10.17 09:04

 東京電力福島第1原発事故で生じた除染廃棄物の県外最終処分について、内堀雅雄知事は今月の講演会で「法律で定められた2045年まで、たった22年(しかない)」と述べた。除染廃棄物は双葉、大熊両町の中間貯蔵施設に搬入されているが、最終処分の議論は始まったばかり。強い危機感が表れた発言だった。

 中間貯蔵施設は県と両町の「苦渋の決断」によって8年前に受け入れが始まった。規模は湯川村や東京都渋谷区の面積とほぼ同じ約1600ヘクタールに及ぶ。県内59市町村の大半に当たる52市町村の除染土壌など約1400万立方メートルが対象となった。現在は帰還困難区域からの搬入が継続されているほか、焼却などによる減容化の作業が進んでいる。

 22年後の2045年3月12日までに除染廃棄物は県外最終処分すると法律で定められているが、環境省が最終処分に向けた検討を目に見える形で始めたのは9月末だ。その議論も、最終処分場の構造や規模を2024(令和6)年度内に複数案を取りまとめるといった悠長なもので、地元の意識とは乖[かい]離[り]している。

 単純に比較はできないが、使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設について、山口県上関町で計画している中国電力は「仮に造れば十数年はかかる」との見通しを示している。除染廃棄物の最終処分場は建設に何年かかるのか。その構造や規模によっては長い年月を要しないか。

 最終処分の量がどの程度になるのかが、まだ見通せない面はあるにせよ、最終処分地選定の具体的な方針や日程は速やかに明示すべきだ。「迷惑施設」とも言える最終処分場を受け入れる側の理解の醸成には、処分場建設以上に時間がかかるであろうことは容易に想像がつく。残された時間はそれほど多くはない。

 内堀知事は同じ講演の席で「県内で、県外で風化が進んでいないか」とも述べた。身の回りにあった除染廃棄物が双葉、大熊両町に持ち込まれてからは、県内でも自分事としてとらえる空気が薄らいでいないかとの懸念を示した。国が責任を持って県外最終処分地を選定し、法律に定められた期限を守るのは当然だが、両町に重い負担をかけている県民もこの問題を風化させない努力を続けていかなければならない。(安斎康史)