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【廃炉の現状】小中学生が学ぶ場を(10月28日)

2023.10.28 08:56

 東京電力は福島第1原発の現状に理解を深めてもらうため、高校生以上を対象に一般の視察を受け入れている。原子力を学ぶ若者が少なくなっていると危惧される中、長期にわたる廃炉を支える人材の育成と確保は急務と言える。災害史に刻まれる12年前の未曽有の災禍と教訓を小中学生が学び、科学技術に関心を深める機会を充実させてもらいたい。

 東電は一般と原子力関係機関、マスコミなどを合わせ、事故発生直後から今年9月末までに延べ9004団体(11万4711人)の視察を受け入れた。保護者の同意を得た高校生らの79団体(1376人)が含まれている。1~4号機や処理水を海洋放出する設備を高台から見学してもらい、現状を解説している。廃炉の正確な知識を国内外の来訪者に現場で直接伝える取り組みは、被災地への風評を抑える上でも意義がある。

 中学生以下については、地元自治体が15歳未満の帰還困難区域への立ち入り自粛を要請している関係から、受け入れを見合わせてきた。仮想ツアーを体験できる仕掛けをホームページに用意してはいるものの、原子力に関心を抱き、将来の廃炉に携わる人材を育てるには、より踏み込んだ対応が必要になる。今月10日に開かれた国の「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」では、浜通りの首長から技術者の養成と地元定着への対策を求める意見が出た。

 例えば、双葉郡内もしくは福島、郡山、いわき各市など利便性の良い場所に、子ども向けの「模擬第1原発」を設置するのも一策だろう。実物大の建屋やタンク群、原子炉のモデルなどを配置し、実際の視察と同様の工程で来場者を案内したい。さらに、チェルノブイリ原発事故などに関する資料も充実させ、原子力災害に関わる総合的な学びの場として、全国に来場を呼びかけてはどうか。

 2018(平成30)年度の開館以来、延べ12万人以上が訪れた富岡町の東電廃炉資料館に子ども向けの展示コーナーを配し、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館などを含めた周遊コースを設定するのも可能だ。国をはじめ被災地の交流人口拡大を目指す福島相双復興推進機構とも連携し、実現の方向性を探ってほしい。(菅野龍太)